スカルパのZGトレックGTXをレビュー:サイズ感とフィーリングを解説!

スカルパのZGトレックGTXをレビュー:サイズ感とフィーリングを解説!トレッキングシューズ
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これから本格的な登山を始めようと考えている方や、そろそろ2足目の相棒を探している方にとって、スカルパのZGトレックGTXは非常に気になる存在ではないでしょうか。

ネットでスカルパZGトレックGTXのレビューや評判を検索してみると、その評価の高さに驚かされる一方で、実際のサイズ感や雪山での使用可否、さらにはリソールをして長く履けるのかといった疑問を持つ方も多いはずです。

私自身もギア選びには慎重になるタイプなので、スペック表だけでは分からないリアルな使用感が知りたいという気持ちがよく分かります。

この記事では、スカルパZGトレックGTXに関する詳細な情報や、実際にフィールドで感じたメリットとデメリットを、あくまで一人の山好きとしての視点から解説できればと思います。

この記事でわかること

①サイズ感や足幅の特徴、スピードレーシングについて
②カタログ値だけでは分からない実際のフィーリング
③使用限界やアイゼン適合に関する注意点
④リソール費用やメンテナンス、他モデルとの比較

スカルパのZGトレックGTX:レビューと基本スペック

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まずは、スカルパZGトレックGTXの基本的なスペックや、実際に足を入れてみて感じた第一印象について深掘りしていきましょう。カタログの数字を並べるだけでなく、実際に山で使うとどう感じるのか、その「感覚」を大切にしてお伝えしますね。

✅サイズ感や足幅の特徴を解説
✅実際の重さと軽量性の評価
✅レディースモデルの専用設計
✅雪山での使用とアイゼン適合
✅ZGトレックGTXとZGトレックの違いは?

サイズ感や足幅の特徴を解説

登山靴選びにおいて、最も頭を悩ませるのが「サイズ感」と「足幅(ワイズ)」のマッチングですよね。特にスカルパのようなイタリアンブランドに対しては、「欧米人向けの細長い木型で作られているから、幅広甲高な日本人の足には合わないんじゃないか?」という先入観を持っている方も多いかもしれません。

しかし、ZGトレックGTXに関しては、その心配は良い意味で裏切られることになります。このモデルに採用されているラスト(木型)は、トレッキング向けに開発された「Medium Last」というタイプです。

これは、クライミングシューズのような極端なタイトさを排除し、長時間の歩行でも足指が圧迫されない適度なボリューム感を持たせています。実際に足を入れてみると、踵(かかと)周りはしっかりとホールドされつつも、前足部(指の付け根あたり)には程よいゆとりがあり、決して「激狭」ではありません。

多くの日本人登山者が「いつものサイズか、厚手の靴下を考慮してワンサイズアップ」で快適に履けているというデータも、この木型の優秀さを物語っています。

フィッティングを左右する素材の魔法

このフィット感の良さを支えているのが、アッパーの主素材である「1.8mm厚の耐水スエードレザー」です。合皮や化学繊維だけの靴とは違い、本革(スエード)は履き込むほどに持ち主の足の形に合わせて繊維が伸び、馴染んでいく特性があります。購入直後の試し履きで「小指が少し当たるかな?」と感じても、数回山に行くと革が伸びて、まるでオーダーメイドのようなフィット感に変化していく過程を楽しめるのも、この靴の醍醐味ですね。

さらに、フィッティングの微調整を可能にしているのが、つま先近くから配置された「スピードレーシングシステム」です。靴紐を通すフックには、軽量スティールとプラスチックを組み合わせたバイコンポーネントパーツが使われており、摩擦抵抗が少なく驚くほどスムーズに紐が締まります。

特筆すべきは、足の甲部分と足首部分の間にあるロック機能付きのフックです。これにより、「つま先側は血流を妨げないように少しゆったりさせつつ、足首側は捻挫防止のためにガッチリ固定する」といったゾーン別の調整が可能になります。

登りと下りで紐の締め具合を変えたい時も、全ての紐を緩める必要がなく、非常に実戦的な機能だと感じています。

実際の重さと軽量性の評価

次に、登山靴の性能を語る上で避けて通れない「重さ」について詳しく見ていきましょう。カタログスペックを確認すると、ZGトレックGTXの重量はメンズサイズ42で片足約625gです。最近では片足400gを切るような超軽量なハイキングシューズも増えているため、数字だけを見比べると「少し重いのでは?」と感じる方もいるかもしれません。

ですが、ここで重要なのは「手に持った時の重さ」ではなく、「実際に山で履いて歩いた時の体感重量」です。結論から言うと、ZGトレックGTXは履いてみると数字ほどの重さを感じさせない、不思議な軽快さを持っています。これには明確な理由があります。

まず一つ目は、靴全体の重量バランスです。アッパーとソールの重量配分が適切に設計されているため、歩行時の振り子の動作がスムーズになり、足が自然と前に出る感覚があります。

軽すぎる靴は、重い荷物を背負った時に足元がフラフラしてしまい、バランスを取るために余計な筋力を使って疲れてしまうことがありますが、ZGトレックGTXには適度な自重があるため、着地が安定し、結果として疲労が蓄積しにくいのです。

なぜEVAではなくPUなのか?

多くの軽量シューズがミッドソール(クッション材)に軽量なEVA(エチレン酢酸ビニル)を採用する中、ZGトレックGTXはあえて重量のある「ポリウレタン(PU)」を採用しています。

  • EVA: 軽くてクッション性が高いが、長期間の荷重で潰れ(ヘタリ)やすく、寿命が短い。
  • PU: 少し重いが、反発力と形状維持力に優れ、重荷を背負ってもクッション性が持続する。

ZGトレックGTXがPUを選んだのは、目先の軽さよりも、アルプス縦走のようなハードな山行における「最後まで変わらないクッション性」を重視した結果だと言えます。

また、スカルパ独自の「ACTIVimpact Technology™」も効いています。これは地面からの衝撃を物理的に吸収・拡散させる構造で、硬い岩場を歩き続けても足裏への突き上げ感がほとんどありません。

軽い靴で岩場を歩くと、夕方には足の裏が痛くなってしまうことがありますが、この靴ならテント場に着くまで足裏の快適さが続きます。「軽さ」とは単純なグラム数ではなく、「一日の終わりの疲労感の少なさ」であると定義するなら、この靴は間違いなく「軽い」部類に入ると私は思います。

※↓↓ZGトレックGTX

引用元:メルカリ

レディースモデルの専用設計

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女性登山者の皆さんにとって、ZGトレックGTXのウィメンズ(WMN)モデルは、単なる「サイズが小さい版」以上の価値があります。スカルパはジェンダーごとの足の解剖学的な違いを深く研究しており、女性用モデルには専用のラストを採用しています。

具体的にどのような点が最適化されているのかというと、まず「ヒールカップ(かかと部分)の形状」です。一般的に女性は男性に比べて踵骨(しょうこつ)が小さく細いため、ユニセックスや男性用の靴を履くと、サイズは合っていてもかかとが浮いてしまい、靴擦れの原因になることがよくあります。

ZGトレックGTXのWMNモデルは、かかとを包み込むカーブがより絞り込まれており、細いかかとでもしっかりとホールドしてくれます。これにより、登りでのかかとの浮きが抑えられ、パワーロスなくスムーズに登ることができます。

また、土踏まずのアーチ位置や甲の高さも女性の平均的な骨格に合わせて微調整されています。重量に関しても、サイズ38で片足約540gと、メンズモデルよりもさらに軽量化が図られています。

筋量が相対的に少ない女性にとって、足元の100gの差は、数時間の歩行後に大きな疲労の差となって現れます。この軽量化は、耐久性を犠牲にすることなく、部材の配置や厚みを最適化することで実現されている点が素晴らしいですね。

デザイン面でも、女性モデルならではの配慮が見られます。登山ウェアはカラフルなものが多いですが、足元が地味すぎるとコーディネートが難しくなることも。

ZGトレックGTXのWMNモデルは、テレメア(深みのあるパープル系)やナイルブルーなど、派手すぎず地味すぎない絶妙なカラーリングが展開されており、ウェアとの合わせやすさも抜群です。「機能性も妥協したくないけど、可愛くない靴は履きたくない」という本音にもしっかり応えてくれる一足です。

雪山での使用とアイゼン適合

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「ZGトレックGTXを買えば、冬の山にも行けますか?」という質問は、初心者がステップアップを考える際に必ずぶつかる疑問です。この点については、命に関わることなので明確に線引きをしておく必要があります。

ZGトレックGTXは、あくまで「無雪期(春・夏・秋)」を中心とした3シーズンブーツであり、本格的な雪山登山用ではありません。

最大の理由は「保温材(インサレーション)」の有無です。冬専用のアルパインブーツ(例:スカルパのモンブランシリーズなど)には、ゴアテックスの中にプリマロフトやシンサレートといった中綿が入っており、氷点下の環境でも指先の温度を保てるようになっています。しかし、ZGトレックGTXにはこれが入っていません。

そのため、厳冬期の2000m級以上の山や、動きの少ない停滞時間が長い状況では、足先が冷え切り、最悪の場合は凍傷になるリスクがあります。

次に「アイゼン(クランポン)への適合」です。ZGトレックGTXのソールは、歩きやすさを重視してある程度の屈曲性(しなり)を持たせてあります。また、かかと部分に「コバ」と呼ばれるアイゼン固定用の溝がありません。

ワンタッチ式やセミワンタッチ式の10本〜12本爪アイゼンは物理的に装着できませんし、無理にベルト式で装着しても、歩行中に靴がしなってアイゼンが外れたり、金属疲労でアイゼンが折れたりする危険性があります。

ZGトレックGTXで対応可能な「雪」の範囲

では全く雪の上を歩けないかというと、そうではありません。以下の範囲であれば十分に使用可能です。

  • 残雪期(春先)の低山: 気温が高く、雪が腐っている(柔らかい)状態。
  • 夏のアルプス雪渓: 白馬大雪渓など、一時的な通過。
  • 冬の低山ハイク: 標高1000m以下で、積雪が少なく気温も極端に低くない場合。

これらの状況では、チェーンスパイクや6本爪の軽アイゼンを装着することで安全に歩行できます。防水性はゴアテックスで万全なので、靴下が濡れる心配はありません。

要約すると、「本格的な雪山デビューには力不足だが、雪の残る春山や初冬の低山なら工夫次第で使える」という立ち位置です。無理をして厳冬期に持ち込むことだけは絶対に避けてください。

ZGトレックGTXとZGトレックの違いは?

登山初心者の方にとって、似たような名前のギアがあると「何か違うの?」「安い方を買っても大丈夫?」と迷ってしまいますよね。

結論からいうと、「ZGトレック」と「ZGトレック GTX」は、基本的に『同じ靴』です。

ショップのポップや通販サイトの商品名で「GTX」が省略されて「スカルパ ZGトレック」と表記されることがよくありますが、日本国内で正規に流通している現行モデルのZGトレックは、標準でGORE-TEX(ゴアテックス)を搭載しています。

以下に、なぜこの「GTX」が重要なのか、そして初心者が確認すべきポイントを解説します。

1. 「GTX」=「ゴアテックス」の証

商品名の末尾についている「GTX」は、防水透湿素材GORE-TEX®(ゴアテックス)の略称です。 この靴には「GORE-TEX® Performance Comfort」という、防水性と透湿性(蒸れにくさ)を両立したメンブレン(膜)が内蔵されています。

  • ZGトレック(略称): 会話や簡略表記で使われる名前。
  • ZGトレック GTX(正式名称): 防水機能があることを明示した名前。

つまり、「GTXなしの廉価版があるわけではない」ので安心してください。

2. なぜ初心者に「GTX」が必須なのか?

山の天気は変わりやすく、晴れ予報でも急な雨に見舞われたり、ぬかるんだ泥道を歩いたりすることは日常茶飯事です。もし防水機能のない靴だと、靴下が濡れて不快なだけでなく、皮膚がふやけて「靴擦れ」や「マメ」の激痛に襲われる原因になります。

ZGトレック GTXは、アッパーの耐水スエードとこのGTXメンブレンの組み合わせにより、深い水溜りや雨の中でも浸水を防いでくれます。

3. 購入時の最終確認ポイント

ネットで購入する場合、「ZGトレック」とだけ書かれていても、説明文に「ゴアテックス」や「GORE-TEX」という記載があれば、間違いなく「ZGトレック GTX」のことです。 念のため、商品画像を見て、靴の側面に小さな金属のプレートやタグで「GORE-TEX」というロゴが付いているか確認すれば完璧です。

まとめ :「名前が少し違うけど大丈夫かな?」という心配は無用です。「ZGトレック」という名前であれば、それは現代アルピニズムの最適解である「ZGトレック GTX」そのものです。安心して、この頼れる相棒を選んでくださいね。

スカルパのZGトレックGTX:レビューと長期使用ポイント

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登山靴は決して安い買い物ではないので、どれくらい長く使えるのか、維持費はどれくらいかかるのかといった「長期的な視点」も重要です。ここからは、購入後の運用やお財布事情について詳しく見ていきましょう。

✅ソール交換やリソールの費用
✅寿命を延ばすメンテナンス方法
✅耐久性に関する評判や口コミ
✅他の登山靴との比較ポイント
✅総括:スカルパのZGトレックGTXをレビュー

ソール交換やリソールの費用

スカルパZGトレックGTXを選ぶ最大の経済的メリットは、メーカー公認で「ソールの張り替え(リソール)」が可能であるという点です。最近の軽量シューズやトレランシューズの多くは、ソール交換を前提としない「使い切り」の設計になっていますが、ZGトレックGTXは違います。

登山靴のソール(Vibram® XS TREK EVO)は、車のタイヤと同じで消耗品です。グリップ力が命ですので、ラグ(溝)が減ってくれば滑りやすくなり、危険です。しかし、アッパーのスエードレザーは、手入れさえしていればソールよりも遥かに長持ちします。

自分の足の形に完全に馴染み、最高の履き心地になったアッパーを、ソールが減ったからといって捨ててしまうのはあまりにも勿体無いですよね。

気になるリソールの費用ですが、スカルパの輸入代理店であるロストアロー社のサポートセンター等に依頼する場合、一般的な目安としては以下の通りです。

修理内容概算費用(税込)備考
オールソール交換¥16,500 前後ソール全体を新品に交換。新品同様のグリップ力が復活します。
ラウンドラバー交換+ ¥3,300 〜つま先周りのゴムも劣化している場合は追加費用がかかります。

(※費用は依頼する修理業者や部材価格の変動により変わりますので、あくまで参考価格としてください。)

新品を買い直すと35,000円〜40,000円程度かかることを考えると、半額以下で機能を再生できるのは非常に合理的です。また、一足の靴を修理しながら長く使うことは、環境負荷を減らすという観点からも、現代の登山者に求められるスタイルだと言えるでしょう。

「ボロボロになるまで履き潰す」のではなく、「メンテナンスして相棒として育てていく」。ZGトレックGTXは、そんな付き合い方ができる本格的な登山靴なのです。

寿命を延ばすメンテナンス方法

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どんなに良い靴でも、メンテナンスを怠れば寿命は縮みます。特にZGトレックGTXのような「レザー×化学繊維×PUミッドソール」のハイブリッド構造の場合、それぞれの素材に適したケアが必要です。ここでは、私が実践している「靴を10年持たせるためのルーティン」をご紹介します。

まず、最も重要なのは「使用後の泥落とし」です。山の泥にはバクテリアや微細な土の粒子が含まれており、これらがスエードの繊維の奥に入り込むと、革の油分を吸い取って乾燥させ、硬化やひび割れを引き起こします。

帰宅したら、まずはインソールを外し、柔らかいブラシと水でアッパーの汚れを洗い流してください。洗剤は毎回使う必要はありませんが、汚れがひどい時は登山靴専用の洗剤を使いましょう。

次に、「撥水処理」です。スエードレザーは濡れると重くなり、通気性も低下します。洗浄後、少し湿っている状態でスエード専用の撥水スプレー(RevivexやNikwaxなど)を吹き付けます。これにより、水弾きが復活するだけでなく、汚れが繊維の奥に入り込むのを防ぐコーティング効果も期待できます。

そして、最も恐ろしい「加水分解」への対策です。ミッドソールのポリウレタン(PU)は、空気中の水分と反応して徐々に分解され、最終的にはボロボロに崩壊します。これを完全に止めることはできませんが、進行を遅らせることは可能です。ポイントは以下の3点です。

  1. 完全に乾燥させる: 使用後は風通しの良い日陰で、数日かけて完全に湿気を抜きます。直射日光やヒーターでの強制乾燥は、革やゴムを痛めるので厳禁です。
  2. 保管場所を選ぶ: 購入時の箱に入れて押し入れの奥にしまうのは「加水分解セット」と言われるほど最悪の保管方法です。風通しの良い棚などに、裸の状態で置いてください。
  3. 定期的に履く: 実はこれが一番効果的です。履いて体重をかけることで、ミッドソール内の水分が押し出され、空気が入れ替わります。山に行けない時も、近所を散歩するだけで寿命は延びます。

適切なケアを行えば、アッパーは5年、10年と持ちます。愛着を持って接すれば、靴は必ず応えてくれますよ。

参考※登山靴の洗い方キャラバン

耐久性に関する評判や口コミ

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スペックや理論だけでなく、実際のフィールドでの耐久性はどうなのでしょうか。私の周囲の登山仲間や、SNS、登山コミュニティでの口コミを分析すると、ZGトレックGTXの耐久性に対する評価は総じて高い水準にあります。

特に評価されているのが、アッパーの「1.8mm耐水スエード」の強靭さです。北アルプスの岩稜帯や、藪漕ぎが必要な低山など、アッパーが岩や枝に激しく擦れるシーンでも、表面が毛羽立つ程度で、機能に影響するような深い傷や破れが発生したという話はあまり聞きません。

化学繊維メッシュが主体の軽量シューズだと、鋭利な岩に引っ掛けて裂けてしまうことがありますが、やはり天然皮革の物理的な強さは頼もしいものがあります。

また、つま先を守る「3D TPUトゥキャップ」も優秀です。従来のゴム製のランドラバーは、経年劣化で剥がれたりひび割れたりしやすいのが弱点でしたが、TPU(熱可塑性ポリウレタン)は形状記憶性が高く、長期間使用してもつま先のフォルムを維持し続けます。

これにより、長年の使用で革が伸びてつま先空間(トゥボックス)が潰れ、下りで爪が当たって痛くなるといったトラブルが起きにくくなっています。

一方で、ネガティブな意見として時折見られるのが「ソールが思ったより早く減った」という声です。これについては、採用されている「Vibram® XS TREK EVO」というコンパウンドの特性を理解する必要があります。

このソールは、濡れた岩場や木の根でも滑らないよう、グリップ力を重視して少し柔らかめのゴム配合になっています。グリップ力と耐摩耗性はトレードオフの関係にあるため、硬いソールに比べれば減りは早いです。

しかし、「滑って転倒するリスク」と「ソールの減りの早さ」を天秤にかけた時、安全性を取るならこの消耗は許容範囲、むしろ「身を削って守ってくれた」と捉えるべきだと私は思います。(※本音です。笑)

他の登山靴との比較ポイント

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市場には数え切れないほどの登山靴が存在しますが、ZGトレックGTXの立ち位置をより明確にするために、よく比較対象となる2つのカテゴリーの靴と徹底比較してみましょう。

VS 超軽量スピードハイクシューズ(HOKA、Salomonなど)

近年流行の厚底系やトレランシューズベースの靴は、片足400g前後と圧倒的に軽いです。しかし、これらは基本的に「荷物が軽いこと」を前提に作られています。

ソールが柔らかくねじれやすいため、15kg以上のテント泊装備を背負うと、靴が荷重に負けてグニャグニャと歪み、足首を支えるために無駄な筋力を使ってしまいます。また、岩場での足裏保護(プロテクション)も薄いです。

  • ZGトレックGTXを選ぶべき人: テント泊や縦走など重い荷物を背負う可能性がある人、岩場での安定感を求める人、足首の捻挫が怖い人。
  • 軽量シューズを選ぶべき人: 日帰りで荷物が軽い人、整備された土の道を速く歩きたい人、足の筋力が十分にある人。

VS 本格アルパインブーツ(スカルパ リベレ、スポルティバ トランゴなど)

もう少し上のグレード、岩稜帯向けのアルパインブーツとの違いはどうでしょうか。これらの靴はソールが非常に硬く(剛性が高い)、爪先だけで岩に立ち込むようなクライミング要素の強い場面では最強です。しかし、ソールが曲がらないため、平坦な林道やなだらかな土の道では、ロボットのような歩き方になり非常に疲れます。

ZGトレックGTXは、アルパインブーツほどの剛性はありませんが、適度にソールが屈曲するため、アプローチの林道から樹林帯、そして岩稜帯まで、「全ての道を70点の快適さで歩ける」というバランスの良さがあります。

日本の山は、岩場にたどり着くまでに長い林道歩きがあることが多いので、この「歩きやすさ」は実は最強の武器になるのです。

総括:スカルパのZGトレックGTXをレビュー

ここまで、スカルパのZGトレックGTXについて、サイズ感からメンテナンス、他モデルとの比較まで、かなり詳細に掘り下げてきました。最後に、この靴がどのような登山者にとって「買い」なのかをまとめたいと思います。

結論として、スカルパのZGトレックGTXは、「日本の山岳環境における、最もバランスの取れた最適解の一つ」であると断言できます。

日帰りの低山ハイクで使ってもオーバースペックすぎて重く感じることはなく、一方で北アルプスのテント泊縦走に持ち込んでも頼りなさを感じることはありません。この守備範囲の広さは驚異的です。

確かに、特定のシーンに特化した靴(超軽量靴や厳冬期靴)には敵わない部分もありますが、「一足で色々な山に行きたい」「長く使える相棒が欲しい」というニーズに対して、これほど高次元で応えてくれる靴は稀有です。

こんな人には特におすすめ!

  • 初めての登山靴選びで、失敗したくない初心者の方
  • 低山からアルプスまで、ステップアップしていきたい方
  • 足幅が少し広めで、海外ブランドの靴を諦めていた方
  • 道具を大切にメンテナンスし、リソールして長く愛用したい方

もし、あなたが今、登山用品店の店頭でZGトレックGTXを手に取っているなら、ぜひ一度足を入れてみてください。そして、店員さんに頼んで重りの入ったザックを背負わせてもらい、店内を歩いてみてください。

その包み込まれるようなフィット感と、安定した歩行感覚に、「これならどこまでも歩いていけそう」という予感を感じるはずです。その予感は、きっと間違っていませんよ。

※本記事のスペック情報やリソール費用などは、執筆時点でのメーカー公表値や一般的な相場に基づいています。最新の正確な情報については、必ずメーカー公式サイト等をご確認ください。

(参考:株式会社ロストアロー|スカルパ正規輸入代理店

※フィッティングには個人差があります。記事内のサイズ感は筆者の体験に基づくものであり、万人に当てはまるわけではありません。購入前には必ず店頭での試着を推奨します。

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