アウトドア好きなら一度はその美しいシルエットに憧れる、MSRのパビリオン。伝説的とも言われるこの大型シェルターですが、いざ手に入れようと思うと、復刻版の仕様や中古品のコンディションなど、気になるポイントがたくさんありますよね。
特に、MSRパビリオンの加水分解によるベタつきや、シームテープの剥がれといった劣化問題は、長く愛用したい人にとって大きな不安要素かもしれません。
筆者も、キャンプサイトでひときわ存在感を放つあの姿を見るたびに、その実用性やメンテナンスのコツについて深く知りたいと感じてきました。
この記事では、2016年の復刻モデルのスペックから、二又化によるカスタム術、さらにはカンガルースタイルに最適なインナーテントの選び方まで、実際に導入を考えている方が知りたい情報を網羅しています。憧れのパビリオンを安心して使いこなすためのヒントを、一緒に見ていきましょう。
この記事でわかること
①パビリオンの復刻版とアップデートの違い
②劣化症状を見極める中古購入のポイント
③居住性を向上させる二又ポールとインナーテント
④強風対策や冬キャンプでの運用とメンテナンス
MSRのパビリオン:愛され続ける理由と復刻の軌跡

なぜこれほどまでに多くのキャンパーがパビリオンに魅了されるのでしょうか。その背景には、単なる道具以上の歴史と、MSRが培ってきたデザイン哲学があります。
ここでは、パビリオンが歩んできた軌跡と、その技術的な進化について詳しく紐解いていきます。
✅2016年復刻モデルのスペックと2021年修正幕体
✅加水分解によるベタつきやシームテープ剥がれの対策
✅中古市場での販売価格相場とコンディションの選び方
✅設営時間はわずか10分で完了する驚きの簡単ステップ
2016年復刻モデルのスペックと2021年修正幕体

2000年代初頭に登場し、瞬く間にキャンプシーンの主役に躍り出たMSRパビリオン。しかし、ほどなくして生産終了となり、長らく「幻のシェルター」として伝説化していました。
そんなファン待望の再販が実現したのが2016年です。日本限定で復刻されたこのモデルは、オリジナルの象徴的なシルエットをそのままに、素材を現代的な高密度ポリエステルへとアップデート。
全長約7メートル、全幅約4.3メートルという巨大なフットプリントを誇りながら、2本のメインポールのみで自立させる合理的な設計は、当時のアウトドア業界に改めて衝撃を与えました。
しかし、物語はここで終わりません。復刻モデルのリリースから数年後、一部の個体でシームテープの早期剥離が確認されたことを受け、日本の正規代理店である株式会社モチヅキは、特定のロットを対象に「アップデート幕体」への交換対応という異例の措置を講じました。
これが、現在中古市場で語られる「2021年修正幕体」の正体です。この修正版は、シーム部分の耐久性が強化されており、現存するパビリオンの中で最も信頼性が高い個体とされています。
これから中古での購入を検討している方は、その個体が交換対応を受けたものかどうかを確認することが、長く愛用するための第一歩になるかなと思います。

復刻版パビリオンの基本スペックまとめ
| 項目 | スペック詳細 |
|---|---|
| 総重量 | 約7.15kg(本体・ポール含む) |
| 収容人数 | 12名〜16名(シェルターとして使用時) |
| 室内最大高 | 2.44m(開放感抜群の高さ) |
| 収納サイズ | 63.5cm × 27cm(意外とコンパクト) |
加水分解によるベタつきやシームテープ剥がれの対策
MSRパビリオンを所有する上で、避けて通れない「宿命」とも言えるのが加水分解です。加水分解とは、ポリエステル生地の裏面に施されたポリウレタン(PU)コーティングが、空気中の水分と反応して分解される化学現象のこと。
これが進むと、幕体がベタベタしたり、独特の酸っぱい異臭(酢酸臭)が発生したりします。筆者も友人から譲り受けた古いテントがベタベタになっていた経験がありますが、あれは本当にショックなものですよね。パビリオンのような高価な幕であれば、そのショックはなおさらです。
加水分解を完全に止める魔法はありませんが、進行を劇的に遅らせる方法はあります。最も重要なのは、使用後の「完全乾燥」です。
キャンプ場で乾いたように見えても、シームテープのわずかな隙間や、折り重なった部分に湿気が残っていることはよくあります。帰宅後にガレージや公園で再度広げ、隅々まで風を通すことが寿命を延ばす鍵となります。

また、保管場所の湿度管理も大切。除湿剤を入れたコンテナに保管したり、時折収納袋から出して空気に触れさせたりするだけでも効果的です。
もしベタつきが出てしまった場合は、市販のポロンTなどの剥離・再コーティング剤を使ってリペアする道もありますが、手間とコストがかかるため、まずは「濡らしたままにしない」という基本を徹底しましょう。
中古市場での販売価格相場とコンディションの選び方
現在、パビリオンは新品で購入することができないため、入手経路は中古市場(ヤフオク、メルカリ、アウトドア専門のリユースショップなど)に限られます。価格相場は非常に幅広く、個体の状態によって天と地ほどの差があります。
最も高値で取引されるのは、先述した「2021年アップデート後の未使用品」で、これには20万円を超えるプレミアム価格がつくことも珍しくありません。一方で、ベタつきが進行した初期モデルやジャンク品扱いのものは、10万円を切る価格で出品されることもあります。
中古品を選ぶ際のチェックポイントは、第一に「幕体の製造年とアップデートの有無」、第二に「シームテープの白濁具合」、そして第三に「付属品の欠品」です。特にメインポールは専用設計で非常に頑丈なため、代替品を探すとコストがかさみます。
また、見落としがちなのが「正規輸入品」か「並行輸入品」かという点。正規代理店のタグがある個体は、過去のメンテナンス履歴が追いやすく、将来的に再販する際も信頼性が高まります。
高額な取引になるため、少しでも不安があれば出品者に「内側のコーティングを手で触った時の感触」や「収納袋を開けた時の臭いの有無」を具体的に質問してみてください。納得のいく回答が得られない場合は、慎重に見送る勇気も必要かなと思います。
設営時間はわずか10分で完了する驚きの簡単ステップ
パビリオンがこれほどまでに支持される実用的な理由は、その設営の圧倒的な速さにあります。一般的な大型ツールームテントを一人で設営しようと思うと、複雑なポールワークと格闘し、30分から1時間かかることも珍しくありません。
しかし、パビリオンは構造が極めてシンプルなため、慣れれば女性一人でも、あるいは初心者でも10分程度で立ち上げることが可能です。この「設営のストレスのなさ」は、移動が多い旅キャンプや、天候が不安定な山間部での設営において、決定的なアドバンテージとなります。

設営の手順は、まず幕体を地面に広げ、四隅を正確にペグダウンすることから始まります。次に、2本のメインポールを持って内部に入り、頂点部分のグロメットに差し込んで垂直に立ち上げる。
これだけで、あの巨大な空間が姿を現します。あとは残りの辺をペグで固定し、各部のテンションを調整すれば完了です。この時、カテナリー曲線(懸垂線)が描く美しいラインを意識して、シワが寄らないように対角線上にテンションをかけるのが綺麗に張るコツです。
設営が楽な分、サイトレイアウトや料理、家族との時間に余裕が生まれる。これこそが、パビリオンがもたらしてくれる最大の恩恵かもしれません。
MSRのパビリオン:使いこなす二又化とインナー活用術

そのまま使っても最高にクールなパビリオンですが、ユーザーの知恵によってその使い勝手はさらに進化しています。特に「空間をどう贅沢に使うか」という視点でのカスタマイズは、パビリオン所有者の楽しみの大部分を占めていると言っても過言ではありません。
✅二又ポールの自作による居住空間の最大化とメリット
✅カンガルースタイルに最適なインナーテントの選び方
✅ニーモのヘキサライトやスノーピーク製品との徹底比較
✅強風時のペグダウンと冬の薪ストーブ使用の注意点
✅まとめ:MSRのパビリオン
二又ポールの自作による居住空間の最大化とメリット

パビリオン唯一の弱点とも言えるのが、幕内中央に鎮座する2本のポールです。ここにポールがあることで、最も高さがある中心部を通り抜けにくかったり、大型のテーブルを中央に置けなかったりという制約が生じます。
これを解消する魔法のテクニックが「二又化(フタマタ化)」です。本来1本の垂直なポールで支えるところを、アルファベットの「A」のような形にした2本のポールで支えることで、中央のデッドスペースを完全に排除できます。
二又化を施したパビリオンの内部は、まさに「動くリビングルーム」です。中央に巨大な焚き火テーブルを置いてグループで囲んだり、中央に大きなインナーテントを置いて贅沢な寝室にしたりと、レイアウトの自由度が飛躍的に向上します。
自作派の間では、イレクターパイプやアルミ合金製の伸縮ポールをジョイントで連結する方法が一般的。ただし、二又化は幕体に外側へ押し広げる力を加えるため、頂点部分の保護や裾のペグダウン強度が重要になります。
筆者の個人的な感想としては、二又化したパビリオンの開放感を一度知ってしまうと、もう標準のセンターポールには戻れないなと感じるほどの感動があります。
カンガルースタイルに最適なインナーテントの選び方
パビリオンは床のない「フロアレスシェルター」ですが、その広大な空間を活かして、中に寝室用の小型テントを置く「カンガルースタイル」が現在のトレンドです。
これの何が良いかというと、外側のパビリオンで雨風や結露をガードしつつ、寝室部分は最小限のサイズで済むため、冬は暖かく、夏は通気性良く過ごせる点にあります。また、インナーテントはペグ打ちを省略して「置くだけ」で運用できるため、撤収も非常にスムーズです。
インナーテント選びのポイントは、パビリオンの壁面の傾斜に干渉しない形状を選ぶこと。壁際が急激に立ち上がっているタイプだと、パビリオンの幕体に接触してしまい、そこから結露が染み込んでくることがあるからです。
DODの「フカヅメカンガルーテント」はその名の通り、傾斜にフィットするよう設計されており、相性は抜群。また、MSRの「エリクサー2」のインナーを左右に2張り並べるスタイルも、ブランドの統一感が出て非常にカッコいいですよ。
ソロならコット一台と小さなモノポールインナー、ファミリーなら大型の自立式インナーなど、人数やスタイルに合わせて「中身」を入れ替えられるのが、パビリオンという大きな殻を持つ魅力ですね。

ニーモのヘキサライトやスノーピーク製品との徹底比較

ツインポールシェルターを検討する際、必ずと言っていいほど比較対象に挙がるのがニーモ(NEMO Equipment Japan)の「ヘキサライト 6P」やスノーピークの「ランドステーション」でしょう。ヘキサライトは、より軽量で遮光性の高い素材や、登山でも使える機動力を重視しており、パビリオンよりも一回りコンパクトです。
一方、ランドステーションはポールの本数を変えることで変幻自在に形を変えられる「変化」が売りです。では、パビリオンの立ち位置はどこにあるのでしょうか。
それはズバリ、「圧倒的な存在感と完成された美学」です。多機能さやアレンジの豊富さではランドステーションに譲りますが、パビリオンには「ただ2本のポールで立っているだけ」という、引き算の美学があります。
また、7メートルというサイズは現行の多くのシェルターを凌駕しており、大人数でのベースキャンプとしての機能性は今なおトップクラス。
流行を追うのではなく、時代を超えて通用する「定番」を手に入れたいという欲求を、パビリオンは満たしてくれます。正直、機能だけで選ぶなら他にも選択肢はありますが、パビリオンを選ぶ人はその「歴史」や「佇まい」に惚れ込んでいることが多いかなと感じます。
強風時のペグダウンと冬の薪ストーブ使用の注意点
パビリオンの運用において、安全管理は最も重視すべき項目です。特にその巨大な表面積は、強風時には巨大な「帆」となって風をまともに受けます。
付属のペグはあくまで最低限のものと考え、強風が予想される場合は、鍛造ペグ(ソリッドステークなど)の30cm〜40cmクラスをフル活用してください。特にポールを支えるメインのガイラインは、地面深く、角度をしっかりつけて打ち込むことが倒壊を防ぐ唯一の手段です。

【薪ストーブ運用に関する警告】
冬キャンプでパビリオン内に薪ストーブをインストールするスタイルが見られますが、メーカーはこれを推奨していません。ポリエステル素材は火の粉一つで簡単に穴が開きますし、何より気密性が高い大型幕内での不完全燃焼は、命に関わる一酸化炭素中毒を引き起こします。もし実践される場合は、複数のチェッカー設置と換気の徹底、そして幕体を保護する煙突ガードの完璧な施工が必須となります。火気の扱いは、あくまで自己責任の範囲内であることを忘れずに運用してください。
※↑↑(出典:東京消防庁「一酸化炭素中毒を防ぐために」)
まとめ:MSRのパビリオン
MSRパビリオンをめぐる旅はいかがでしたか?2016年の復刻から月日が流れ、素材の劣化やメンテナンスの手間といった現実的な課題はありますが、それでもなお、このシェルターが放つ輝きは色褪せることがありません。
それは、MSRというブランドが長年培ってきた「安全への探求」と「機能美」が、このパビリオンという一つの形に結実しているからでしょう。手間をかけてメンテナンスをし、自分好みに二又化やカンガルースタイルでカスタムする。
そうして使い込まれたパビリオンは、単なるキャンプ道具を超えて、所有者の歴史を刻むパートナーになっていきます。中古市場での一期一会の出会いを大切に、ぜひ納得のいく一張りを手に入れてください。
なお、メンテナンス方法やパーツの適合、安全な火気の使用方法については、時とともに情報が更新されるため、正確な情報はMSR公式サイトや専門店のスタッフへ必ず確認するようにしてください。
あなたのアウトドアライフが、このMSRパビリオンと共に、より豊かでドラマチックなものになることを願っています!



