キャンプで焚き火や薪割りを楽しみたいと思ったとき、まず候補に挙がるのがモーラナイフのブッシュクラフトシリーズではないでしょうか。特にブラックやサバイバルといったモデルは、その無骨な見た目と高い実用性から多くのアウトドア愛好家に選ばれています。
しかし、種類がいくつかあってどれを選べばいいのか迷ってしまったり、カーボン鋼の錆びやすさやメンテナンスの研ぎ方が気になったりすることもありますよね。筆者も最初は、コンパニオンと何が違うのか、本当におすすめなのはどのモデルなのか分からず悩みました。
この記事では、各モデルのスペック比較から、実践でのバトニング性能、さらに長く使うための黒錆加工の手順まで、詳しくご紹介します。これを読めば、あなたにとって最適な一本がきっと見つかるはずですよ。

この記事でわかること
①ブッシュクラフトシリーズ各モデルの違い
②バトニングやフェザースティック作りでの実力
③初心者が迷いやすいコンパニオンとの比較
④カーボン鋼を錆から守るメンテナンス方法
モーラナイフのブッシュクラフトで最高の野営を楽しむ

モーラナイフのラインナップの中でも、特に「自然の中で生き抜く」ことに特化したのがこのシリーズです。まずは、主要モデルがどのような特徴を持っているのかを整理してみましょう。
✅ブラックやサバイバルの特徴とスペックを徹底比較
✅コンパニオンとの違いと選ぶべきおすすめの基準
✅バトニングのやり方と刃の厚さがもたらす圧倒的強度
✅実際に使用したユーザーのリアルな評価と口コミ
ブラックやサバイバルの特徴とスペックを徹底比較

モーラナイフのブッシュクラフトシリーズにおいて、双璧をなすのが「ブラック」と「サバイバル」です。どちらも基本となるナイフ本体の設計は共通していますが、そのコンセプトには明確な違いがあります。まず、最もスタンダードかつ人気なのが「ブッシュクラフト ブラック」です。
このモデルの最大の特徴は、3.2mmという肉厚なブレードに施されたDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングにあります。このブラックコーティングは、単に見た目がタクティカルで格好良いだけでなく、カーボンスチールの弱点である「錆びやすさ」を強力にカバーしてくれる実用的な仕様なんです。

一方で、より冒険心をくすぐるのが「サバイバル」モデルです。こちらはナイフ本体の性能はブラックと同等(あるいはステンレス版もあり)ですが、シース(鞘)にファイヤースターターとダイヤモンドシャープナーが統合されているのが最大のポイント。
筆者も初めてこれを見たときは「これ一本あれば、どこでも生きていけるんじゃないか」とワクワクしてしまいました。シースにすべての道具が収まっているため、忘れ物の心配がなく、ミニマルな装備で野営を楽しみたいソロキャンパーにはたまらない仕様ですね。

主要モデルのスペック比較表
| モデル名 | ブレード素材 | 刃厚 | 刃長 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| ブラック | カーボンスチール | 3.2mm | 109mm | DLCコーティング仕様 |
| サバイバル | カーボン / ステンレス | 3.2mm | 109mm | スターター・砥石付き |
| フォレスト | ステンレススチール | 2.5mm | 109mm | 調理・軽作業向け |
また、意外と見落とされがちなのが「フォレスト」というモデルです。名前にブッシュクラフトと付いてはいますが、こちらは刃厚が2.5mmと少し薄く、ブレードの先端に向かってさらに薄くなる加工がされています。
そのため、薪をバリバリ割るような使い方よりも、魚をさばいたり肉を切ったりといった「繊細な作業」に向いているんですね。自分のキャンプスタイルが「焚き火メイン」なのか「料理メイン」なのかによって、選ぶべきモデルは大きく変わってきます。
購入時の注意点!
「フォレスト」はバトニングに特化したモデルではありません。無理に太い薪を叩くと先端が欠ける恐れがあるため、ハードな使用を想定しているなら迷わずブラックかサバイバルを選びましょう。

コンパニオンとの違いと選ぶべきおすすめの基準
モーラナイフには、2,000円台で購入できる超定番の「コンパニオン」シリーズがあります。特に刃が厚い「コンパニオン ヘビーデューティー(HD)」はブッシュクラフトの強力なライバルです。
筆者も最初は「値段が倍以上違うなら、安いコンパニオンで十分じゃない?」と思っていました。しかし、実際に使い込んでみると、その価格差には納得の理由があることが分かります。
まず決定的な違いは、「ナイフの背(スパイン)」の仕上げです。ブッシュクラフトシリーズは、出荷時から背の角がピンと立った「90度エッジ」に研磨されています。これがなぜ重要かというと、この鋭い角があるおかげで、ファイヤースターターのロッドを擦ったときに大量の火花を散らすことができるんです。
コンパニオンHDの背は角が丸められていることが多く、自分でヤスリで削らない限り火起こしには使えません。この「箱出しでそのままプロ仕様」というのが、ブッシュクラフトシリーズの大きな付加価値ですね。

次に、ハンドルとシースの作り込みも違います。ブッシュクラフトシリーズのハンドルは、指を保護するガードがより深く、グリップエンドも握り込みやすい形状になっています。これにより、力を入れる作業でも手が滑りにくく、安全性が格段に向上しているんです。
シースについても、ブッシュクラフトはベルトクリップを外してベルトループに付け替えられるなど、装備に合わせたカスタマイズが可能です。「長く愛用できる本格的な道具が欲しい」という方や、加工の手間を省きたい方には、上位モデルであるブッシュクラフトを強くおすすめします。
どちらを選ぶべき?判断基準のまとめ
- ブッシュクラフトが向いている人:火起こしもナイフで行いたい、道具の加工が苦手、プロ仕様の剛性を優先したい
- コンパニオンHDが向いている人:予算を抑えたい、自分で背を削るなどのカスタムを楽しめる、まずはコスパ重視
バトニングのやり方と刃の厚さがもたらす圧倒的強度

ブッシュクラフトの醍醐味といえば、ナイフ一本で薪を作り出す「バトニング」ですよね。ここで重要になるのがブレードの厚みです。ブッシュクラフト ブラックの刃厚3.2mmというのは、実はモーラナイフの中でもかなり厚い部類に入ります。
この厚みがあることで、ナイフを薪に食い込ませた後、左右に薪を押し広げる「クサビ効果」が強力に働きます。2mm程度の薄いナイフだと薪に挟まって動かなくなることもありますが、3.2mmあれば節のある薪でも「パッカーン」と快感とともに割ることができます。
バトニングのやり方は、まず割りたい薪の端にナイフを当て、もう一本の太い棒(バトン)でナイフの背を叩くだけ。このとき、ナイフを無理にこじったりせず、真っ直ぐ下に力を伝えるのがコツです。
スカンジグラインドという北欧伝統の刃付けは、薪への食い込みが良く、かつ刃先が欠けにくい頑丈な角度(約27度)に設定されているため、安心して叩くことができます。筆者もこのナイフで広葉樹の薪を何本も割ってきましたが、その頼もしさは格別です。

安全にバトニングを楽しむためのヒント
ただし、モーラナイフは「フルタング(鋼材がハンドルの末端まで貫通している構造)」ではありません。
そのため、あまりに太すぎる薪や、岩のように硬い節を無理やり叩き続けると、ハンドルの結合部に負荷がかかりすぎてしまうことがあります。あくまで「小焚き火用の薪作り」や「焚き付け用の細割り」を作るための道具として、優しく扱ってあげることが大切かなと思います。
ナイフの強度はあくまで一般的な使用を想定した目安です。製品の正しい使用方法については、メーカーであるMoraknivのガイドラインを確認することをおすすめします。
(参照元:Morakniv Official ‘Care for your knife’)
実際に使用したユーザーのリアルな評価と口コミ
実際にブッシュクラフト ブラックを使っている人たちの声を聞くと、最も多く挙げられるのが「手に吸い付くようなグリップ感」です。ハンドルの表面にはTPEラバーという素材が使われており、これが適度な弾力と摩擦を生んでくれます。

冬の寒い時期にグローブをしていても、あるいは雨で手が濡れていても、しっかりと握れるのは大きな安心感に繋がります。筆者の登山仲間も「他のナイフも持っているけど、結局一番信頼して使えるのはこのグリップのモーラかな」と言っていました。
また、切れ味についても非常に高い評価が多いですね。特にカーボンスチールモデルは、砥石との相性が抜群に良く、少し研ぐだけですぐにカミソリのような切れ味が復活します。
フェザースティック(薪を薄く削って火を付きやすくするもの)を作る際も、刃の斜面を木に密着させてスルスルと削れる感覚は、一度味わうと病みつきになります。キャンプの夜に焚き火のそばで、じっくりとフェザーを作る時間は、まさに至福のひとときですよ。
もちろん、良い評価ばかりではありません。「シースがプラスチック製で安っぽく感じる」という意見や、「カーボンなのでうっかり放置すると一晩で赤錆が出た」という失敗談も散見されます。
しかし、これらの欠点も含めて「道具を育てる楽しみ」として捉えているユーザーが多いのも、このナイフの面白いところ。自分だけの相棒として、多少の傷や錆さえも思い出に変えていける、そんな懐の深さがモーラナイフのブッシュクラフトにはある気がします。
モーラナイフのブッシュクラフトを長く愛用する手入れ

一生モノの相棒にするためには、適切なメンテナンスが不可欠です。特にカーボンスチールモデルを選んだ場合、手入れを怠るとせっかくのナイフが台無しになってしまいます。ここでは、誰でもできる基本のケアをご紹介します。
✅切れ味を復活させる研ぎ方と砥石選びの基本ステップ
✅カーボン鋼の錆を防ぐ黒錆加工の手順とメンテナンス
✅まとめ:モーラナイフのブッシュクラフト
切れ味を復活させる研ぎ方と砥石選びの基本ステップ
ナイフは使えば必ず切れ味が落ちます。でも安心してください、モーラナイフのスカンジグラインドは「世界一研ぎやすい形状」と言っても過言ではありません。一般的な包丁のように角度を保つのに苦労する必要がないんです。
ブレードの広い斜面(ベベル)を砥石にぴったりと当てれば、それがそのまま正しい角度になります。そのまま前後させるだけで、ピカピカの刃先が戻ってきますよ。
用意する砥石は、まずは「1000番(中砥石)」があれば十分です。もし、刃が大きく欠けてしまった場合は「400番前後(荒砥石)」で形を整え、最後により鋭く仕上げたいなら「3000〜6000番(仕上げ砥石)」を使うのが理想的。
筆者の場合は、キャンプから帰ってきたら、まず汚れを落としてから1000番で軽く整え、最後に革砥(革の裏側に研磨剤を塗ったもの)でサッと撫でて仕上げています。これだけで、新聞紙がスパスパ切れるようになりますよ。

研ぎのステップを詳しく解説
- 砥石を濡らす:砥石に水分をたっぷり含ませます(水に漬けるタイプと、かけるだけのタイプがあります)。
- 角度を固定:ベベル面を砥石に密着させます。隙間がないかよく確認しましょう。
- 一定の力で研ぐ:引くときに力を入れるイメージで、ゆっくりと往復させます。
- バリを取る:裏側に「返り(バリ)」が出たら、裏面を軽く数回研いでバリを取り除きます。
もし自分で研ぐのが不安な場合は、まずは不要な包丁などで練習してみるのもいいかもしれませんね。
カーボン鋼の錆を防ぐ黒錆加工の手順とメンテナンス

カーボンスチールの天敵は「赤錆」です。これを防ぐための裏技として、アウトドアファンの間で定番なのが「黒錆加工」です。
これは、あらかじめ表面を意図的に酸化させて、安定した黒錆の皮膜を作る方法です。赤錆(Fe2O3)は金属を腐食させますが、黒錆(Fe3O4)は緻密な膜となって、それ以上の腐食を食い止めてくれる優れものなんです。
やり方はとてもシンプル。濃く煮出した紅茶(タンニン)と、お酢(酸)を7:3くらいの割合で混ぜ、そこに脱脂したナイフを漬け込むだけです。1〜2時間もすれば、銀色の刃が美しいマットなグレーや黒に変色します。
これが皮膜となって、水気に強くなるんですね。筆者もこの加工を施していますが、多少の雨や調理で使っても、以前より圧倒的に錆びにくくなりました。何より、見た目が渋くなって自分だけのオリジナル感が出るのが最高です。
黒錆加工を成功させるコツ
最大のポイントは「徹底的な脱脂」です。ブレードに少しでも指の油や防錆油が残っていると、そこだけ色が乗らずにムラになってしまいます。中性洗剤やパーツクリーナーで、これでもかというくらい綺麗に洗ってから漬け込みましょう。
加工が終わった後は、しっかりと水洗いして乾燥させ、仕上げに椿油やオリーブオイルを薄く塗っておけば完璧です。特にブッシュクラフト ブラックのようにコーティングがあるモデルでも、研いだ後の刃先(エッジ部分)は鋼材が露出しているので、そこだけピンポイントで加工するのもアリですよ。

まとめ:モーラナイフのブッシュクラフト
さて、ここまでモーラナイフのブッシュクラフトシリーズについて、その選び方から実践的な使い方、そしてメンテナンスまで詳しく見てきました。たかがナイフ、されどナイフ。自分にぴったりの一本を手にすると、キャンプ場での薪割りや火起こしが、ただの「作業」から、自然と向き合う特別な「体験」に変わるはずです。
ブッシュクラフト ブラックやサバイバルは、まさにその体験を支えてくれる最高の相棒です。丈夫で頼りがいがあり、使い込むほどに自分の手に馴染んでくる。そんな道具と共に過ごす時間は、慌ただしい日常を忘れさせてくれる至福のひとときになるでしょう。
筆者自身、このナイフを手にしてから、自然の中での過ごし方がより深く、より創造的になったと感じています。

最後になりますが、ナイフは非常に鋭利な刃物です。使用する際は周囲の安全を十分に確認し、決して無理な使い方はしないでください。また、銃刀法や軽犯罪法など、刃物の持ち歩きに関する法律についても正しく理解しておくことが重要です。
正しい知識とマナーを持って、この「一生モノの相棒」と一緒に、あなただけの素敵なブッシュクラフトライフを楽しんでくださいね!





















