こんにちは、登山・トレッキング装備完全ガイド:初心者入門を運営しているリュウセイです。キャンプやブッシュクラフトに興味を持つと、必ずと言っていいほど名前が挙がるのがモーラナイフですよね。
中でも赤いハンドルが印象的なモーラナイフのクラシックは、100年以上の歴史を持つ伝統的なモデルとして根強い人気があります。でも、実際に購入しようとすると、モーラナイフのクラシックのサイズ選びで迷ったり、カーボン鋼特有のサビやすさを心配してモーラナイフのクラシックの研ぎ方やメンテナンス方法が気になったりする方も多いのではないでしょうか。
また、モーラナイフのクラシックでバトニングができるのかという強度面への不安や、自分だけの一本に仕上げるモーラナイフのクラシックの黒錆加工の手順を知りたいという声もよく耳にします。筆者も最初はカーボンスチールの扱いに緊張しましたが、手入れをするほどに愛着がわくこのナイフの魅力は、他の近代的なナイフにはないものだと感じています。
この記事では、そんな皆さんの疑問を解消するために、モデルごとの違いから最新の構造、そして長く使い続けるための手入れ術まで、筆者の経験を交えて分かりやすくお伝えします。

この記事でわかること
①クラシック各モデルのサイズ感と最適な用途
②リニューアルで劇的に進化したタング構造と強度
③失敗しない黒錆加工の黄金比と手順
④ウッドカービングや調理などの実践的な評価
モーラナイフのクラシック:伝統が息づく魅力と進化

モーラナイフのクラシックシリーズは、スウェーデンのダーラナ地方で育まれた「道具としての美しさ」と「実用性」を兼ね備えた逸品です。単なる道具の域を超え、スウェーデン王室御用達の認定を受けているその品質は、世界中のアウトドア愛好家から信頼を寄せられています。
ここでは、そのラインナップの全貌と、近年行われた重要なアップデートについて、筆者の視点から詳しく深掘りしていきましょう。
✅モデルごとのサイズや種類の違いを徹底比較
✅強度が向上した新モデルの構造とバトニングの可否
✅カーボン刃をサビから守る黒錆加工の具体的な手順
✅初心者でも使い易いNo2や1/0の最適な選び方
モデルごとのサイズや種類の違いを徹底比較

モーラナイフのクラシックには、主に「1/0」「2」「3」という3つの主要なサイズバリエーションが存在します。
筆者が実際に手に取って感じるのは、単に「大きい・小さい」という違いだけでなく、それぞれが持つ「得意分野」が明確に分かれているということです。サイズ選びに迷っている方のために、詳細なスペックと筆者なりの使用感をまとめてみました。
| モデル名 | 全長 | 刃長 | 刃厚 | 重量 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| Classic No 1/0 | 約 170 mm | 約 77 mm | 2.0 mm | 約 55 g | 繊細な工作、ネックナイフ |
| Classic No 2 | 約 214 mm | 約 105 mm | 2.5 mm | 約 86 g | 万能、フェザー作り |
| Classic No 3 | 約 253 mm | 約 135 mm | 2.5 mm | 約 128 g | 調理、大型の木工 |
まず、最もスタンダードで「最初の1本」にふさわしいのがClassic No 2です。刃渡りが約10cmというのは、日本人の手にも馴染みやすく、キャンプサイトでの軽作業からフェザースティック作りまで、ほぼ全てのブッシュクラフト的用途をこれ一本でカバーできる黄金比と言えますね。
一方で、No 1/0はそのコンパクトさが魅力。首から下げる「ネックナイフ」スタイルでも邪魔にならず、指先の延長のように扱えるため、スプーンを削り出したりするような細かいウッドカービング(グリーンウッドワーク)において無類の操作性を発揮します。
逆にNo 3は、刃渡りが長い分、スイカを切ったり大きな肉を捌いたりといったキャンプ料理で非常に使いやすい。ただ、クラシックシリーズはガードがないため、大型モデルを扱う際はより慎重なハンドリングが求められます。

このように、モーラナイフのクラシックは単純な「大・中・小」ではなく、自分のアウトドアスタイルが「工作寄り」なのか「調理寄り」なのかによって最適な選択が変わってくる、奥の深いラインナップとなっているんです。
筆者の場合は、No 2をメインに使いつつ、細かい作業用にNo 1/0をサブとして携行するスタイルがお気に入りです。

強度が向上した新モデルの構造とバトニングの可否
これからモーラナイフのクラシックを手に入れようとしている方に、絶対に知っておいてほしいのが2020年に行われた劇的なリニューアルについてです。

見た目は伝統的な赤いハンドルのままですが、内部構造は「現代スペック」へと進化を遂げています。以前の古いモデルを知っている方ほど、その強度の違いに驚くはずです。このアップデートにより、実用上の信頼性が飛躍的に高まりました。
- タングの完全貫通:鋼材がハンドル内部を端まで貫通する「フル・ラットテールタング」を採用。
- カシメ固定:ハンドルの柄尻(バット)部分で金属を叩いて広げるカシメ処理により、物理的にブレードが抜けない構造に。
- シースの刷新:光沢のあるポリマー製シースとなり、スウェーデン産の高品質なベジタブルタンニンレザーのベルトループが付属。

以前のモデルは、タングがハンドルの途中で終わっていたり、接着のみで固定されていたりしたため、無理な負荷をかけるとハンドルから刃が抜けてしまうリスクがゼロではありませんでした。しかし現行品は、柄尻に見える「金属の突起(カシメ)」が物語る通り、非常に堅牢な作りになっています。
では、皆さんが気になる「バトニング(薪割り)」は可能なのか?という点ですが、筆者の見解としては、「針葉樹などの柔らかい薪を小割りにする程度ならOK。ただしフルタングナイフのような過信は禁物」というスタンスです。
たとえタングが貫通しているとはいえ、クラシックシリーズのハンドルは天然の「白樺」です。節のある硬い広葉樹を力任せに叩けば、鋼材の強度以前に木製のハンドルが割れてしまうリスクがあります。
もし、薪割りをガンガン行いたいのであれば、フルタング構造(鋼材がハンドルの形そのままに挟み込まれているタイプ)を持つモデルを選ぶのが正解です。
クラシックの良さは、その「軽さと切れ味」にあるので、バトニングは補助的に考え、無理のない範囲で楽しむのがこのナイフを長持ちさせるコツですね。

旧モデルとの見分け方
中古市場や店頭在庫などで旧モデルと混在している場合がありますが、見分け方は簡単です。ハンドルの底を見て、金属が露出して叩き潰されたような跡があれば「新モデル(カシメあり)」、何もなければ「旧モデル」です。実用性を重視するなら、間違いなく新モデルを選んでおくべきでしょう。

カーボン刃をサビから守る黒錆加工の具体的な手順
モーラナイフのクラシックに採用されている鋼材は「カーボンスチール(炭素鋼)」です。ステンレスに比べて圧倒的に研ぎやすく、かつカミソリのような鋭い切れ味を得られるのがメリットですが、最大の弱点は「驚くほどサビやすい」ということ。

果物を切って数分放置しただけで、赤茶色のサビ(酸化第二鉄)が発生してしまうこともあります。そこで多くのユーザーが行っているのが、「黒錆加工」です。
黒錆(四酸化三鉄)は、赤錆とは異なり、鉄の表面を緻密な皮膜で覆って内部の腐食を守ってくれる「良いサビ」です。これを意図的に発生させることで、ナイフの寿命を延ばし、メンテナンスを楽にすることができます。
筆者が何度も試行錯誤して辿り着いた、最もムラなく綺麗に仕上がる手順を公開します。

紅茶に含まれるタンニンと、酢の酸が反応して強力な酸化被膜を作ります。紅茶は安価なティーバッグで構いませんが、できるだけ濃く(真っ黒に見えるほど)煮出すのがコツです。

具体的な加工ステップは以下の通りです:
- 研磨と下地作り:まず既存の油分や微細な汚れを落とすため、#1000程度の砥石や耐水ペーパーでブレード表面を軽く整えます。
- 徹底的な脱脂:ここが一番重要です!中性洗剤で洗い、パーツクリーナーなどで油分を完全に飛ばします。指の脂が付くだけでそこが斑点になるので、これ以降はブレードに素手で触れてはいけません。
- 溶液への浸漬:紅茶7:酢3の混合液を作り、ブレード全体が浸かる深さの容器(ペットボトルをカットしたものが便利)に入れます。ハンドル(木製部)まで漬けると変色するので注意!
- 放置と反応:1時間から2時間ほど放置します。シュワシュワと細かい泡が出てきて、銀色の刃が次第に黒ずんできます。
- 乾燥と定着:引き上げたら、流水で優しく「流すだけ」にします。定着直後の黒錆は非常に脆いため、タオルでゴシゴシ拭くと剥がれてしまいます。ドライヤーの冷風などで完全に乾かしましょう。
- オイルコート:最後にオリーブオイルや椿油を塗り込み、数時間放置すれば皮膜が安定します。

黒錆加工を施すと、ブレードが軍用ナイフのような渋いマットブラックに変わります。
見た目が格好良くなるだけでなく、キャンプでの調理の際にもサビを気にしすぎず使えるようになるので、カーボンモデルを購入したらまず最初に行いたい儀式ですね。ただし、酸の力で表面を腐食させる行為ですので、加工後は必ず切れ味を確認し、必要であれば軽く研ぎ直してください。
初心者でも使い易いNo2や1/0の最適な選び方

「初めてのモーラナイフ、どれを買えばいいの?」という質問に対し、筆者はいつもその人の手の大きさと、キャンプで何をしたいかをヒアリングするようにしています。
クラシックシリーズは、近代的なナイフのようにラバーグリップや指を守るヒルト(ツバ)がないため、選び方を間違えると扱いにくさを感じてしまうことがあるからです。ここでは初心者の方が失敗しないための選び方のポイントを深掘りします。
まず、一般的な成人男性で「これ一本で何でもこなしたい」なら、間違いなくClassic No 2が正解です。刃長105mmは薪を削るのにも、食材を切るのにも絶妙なサイズ。また、バレル型(樽型)のハンドルは太すぎず細すぎず、様々な握り方に対応できます。
もし、手が小さい女性の方や、登山で荷物を1gでも削りつつ、現地でちょっとした工作を楽しみたいという方には、No 1/0を強く推奨します。刃が薄い(2.0mm)ため、鉛筆を削るような繊細な感覚でナイフを扱えるのが特徴です。
クラシックシリーズは「ガード」がありません。突き刺すような動作をしたり、強い力を入れて木を削っている時に手が滑ると、そのまま自分の指が刃の方へ滑り込み、大怪我をする危険があります。初心者のうちは、必ず滑り止めの効いた作業用グローブ(耐切創手袋)を着用することを強くおすすめします。
また、用途についても考慮が必要です。もしあなたが「主に釣った魚を捌きたい」「海水の影響がある場所で使う」というのであれば、カーボンのクラシックよりも、ステンレスモデルがある「モーラナイフ コンパニオン」の方が管理が圧倒的に楽かもしれません。
それでも、この「木製ハンドルの温かみ」と「研ぎ上げた瞬間の凄まじい切れ味」を味わいたいのであれば、クラシックはあなたの期待に120%応えてくれるはずです。
最終的に、道具は使ってナンボです。No 2を選んでその汎用性に驚くも良し、No 1/0を選んでその精密な操作性に惚れ込むも良し。どちらを選んでも、この赤いハンドルはあなたのキャンプライフをより「本格的」なものへと変えてくれるでしょう。
モーラナイフのクラシック:永く愛用する手入れ法

「道具は育てるもの」という言葉がこれほど似合うナイフも珍しいでしょう。モーラナイフのクラシックは、適切な手入れを繰り返すことで、新品の時よりも使いやすく、そして味わい深い姿へと変わっていきます。筆者が実践している、一生モノにするためのメンテナンス術をご紹介します。
✅切れ味を維持する研ぎ方の基本と日常のメンテナンス
✅レザー仕様のシースケースやハンドルの保管方法
✅まとめ:一生モノのモーラナイフクラシックを育てる
切れ味を維持する研ぎ方の基本と日常のメンテナンス
クラシックシリーズの最大の特徴は、その「スカンジグラインド」という刃の形状にあります。これは、ブレードの中ほどから刃先にかけて一つの平らな斜面(ベベル)だけで構成されている形状です。

これが、実は初心者にとって「研ぎやすい」最大の理由なんです。一般的な包丁のように角度を指で維持する必要がなく、砥石にベベル面をピタッと押し当てるだけで、常に正しい角度で研ぐことができるからです。
日々のメンテナンスの流れとしては:
- 使用後:汚れを落とし、乾いた布で水分を徹底的に拭き取る。特にハンドルの付け根に水気が残りやすいので注意です。
- 研ぎ(シャープニング):切れ味が落ちたと感じたら、#1000〜#2000程度の砥石で数回撫でるだけで、すぐにカミソリのようなエッジが復活します。カーボンスチールは非常に素直な鋼材なので、研ぐ時間も短くて済みます。
- 防錆:研ぎ終わったら、必ず防錆油を塗ります。食品を切る予定があるなら、椿油やオリーブオイル、なければ食用油でも代用可能です。
また、一つ上のメンテナンスとして、「ストロッピング(革研ぎ)」もおすすめです。革の表面に研磨剤を塗り、刃を撫でるように滑らせるだけで、砥石を使わなくても驚くほどの切れ味を維持できます。
筆者は山へ行く前夜、必ずこのストロッピングを儀式のように行っています。この一手間で、現地での作業効率が格段に変わりますよ。
豆知識:刃物を革砥で研ぐ行為をストロッピングと言います。革砥(かわと)と呼ばれる革製の道具と研磨剤を用いて、刃物の切れ味を維持・向上させる仕上げの研磨方法です。砥石での研ぎの後に残る微細なバリやカエリを取り除き、刃先をより滑らかにすることで、切れ味を劇的に向上させます。出典:楽天
レザー仕様のシースケースやハンドルの保管方法
ナイフ本体だけでなく、それを守る「シース(鞘)」と「ハンドル」の手入れも忘れてはいけません。2020年以降の新クラシックシリーズには、スウェーデンの高級レザーを用いたベルトループが付いています。
このレザーは「ベジタブルタンニンなめし」という、植物由来の成分で加工されたもので、使い込むほどに色が深まり、ツヤが出てくるのが特徴です。放っておくと乾燥してカサカサになったり、雨に濡れて硬くなったりするので、半年に一度くらいはミンクオイルやレザー用の保革クリームを塗り込んであげてください。

そして、象徴的な赤いハンドル。これは白樺の木を赤いステインで染めたものですが、長年使っていると少しずつ塗装が剥げてきて、中の木肌が見えてくることがあります。これを「劣化」と捉えるか、「味」と捉えるかは人それぞれですが、筆者はこの経年変化が大好きです。
ハンドルの割れを防ぐためには、亜麻仁油(リンシードオイル)や蜜蝋ワックスを薄く塗り込むと、防水性が高まり、握った時のグリップ感もしっとりと手に吸い付くようになります。
長期保管の注意点:しばらく使わない時は、シースに入れたままにせず、別々に保管するのが理想です。シース内の湿気やレザーの油分が原因で、思わぬ場所から赤錆が発生することがあるからです。特に湿度の高い日本の夏場は、風通しの良い乾燥した場所を選んであげてくださいね。
スウェーデンの熟練職人が作り上げたこのナイフには、適切に扱えば一生、あるいは次の世代まで引き継げるポテンシャルがあります。
事実、スウェーデンでは親から子へ、初めてのナイフとしてクラシックが贈られる文化があるそうです。そんな物語を想像しながら手入れをする時間は、まさに至福のひとときと言えるのではないでしょうか。
まとめ:一生モノのモーラナイフのクラシックを育てる

いかがでしたでしょうか。モーラナイフのクラシックは、単なる切断道具を超えて、使う人の歴史や好みが反映される素晴らしいパートナーになります。筆者も山へ行くたび、この赤いハンドルを握る瞬間にワクワクを感じます。
最新のタング構造による信頼性と、カーボン鋼ならではの圧倒的な切れ味、そして自分自身で手入れをする楽しさ。それらすべてが、この一本に詰まっています。
- 用途に合わせてNo 2(万能)やNo 1/0(繊細)を選ぶ
- 現行モデルはカシメ固定のフル・ラットテールタングで強度が向上
- 黒錆加工(紅茶7:酢3)でサビを防ぎつつ自分だけの色に染める
- 使用後は「水分除去」と「油引き」を習慣にする
もちろん、ナイフは刃物ですので、使用の際は常に周囲の安全を確認し、自己責任での取り扱いをお願いします。正確な仕様や最新のラインナップについては、必ず(出典:Morakniv日本公式サイト)をご確認ください。皆さんもぜひ、自分だけのモーラナイフ クラシックと共に、素敵なアウトドアライフを楽しんでください!




















