
ピークデザインのアウトドアライン(Outdoor Line)がついに登場しましたが、情報が多すぎて「結局、自分にはどれが合うの?」と迷っていませんか。特に、既存のエブリデイシリーズとは全く異なるコンセプトで作られているため、公式サイトの綺麗な写真だけでは実際の使用感が伝わりにくいのが正直なところです。
「スリング4Lに愛用のフルサイズ機は入るのか?」「バックパック18Lは通勤リュックとして使えるのか、それとも完全な登山用なのか?」といった疑問は、高価なギアを購入する上で絶対に解消しておきたいポイントですよね。
筆者は、購入前は海外のレビュー動画を漁り尽くしましたが、日本の住環境や体格に合わせた詳細なレビューはまだ少ないのが現状です。
この記事では、実際にフィールドと街中で使い倒した筆者が、カタログスペックでは分からない「リアルな使い心地」を徹底的に解説します。良い点だけでなく、購入前に知っておくべき「人を選ぶポイント」まで包み隠さずお伝えします。
この記事でわかること
①バックパック18Lと25Lの決定的な構造の違い
②14インチMacBookを通勤で持ち運ぶ際の実用性
③スリング4Lにカメラが入らない対処法
④競合製品と比較した際のメリットとデメリット
ピークデザインのアウトドア(スリング/バックパック):詳細レビュー

まずは、今回のアウトドアライン(Outdoor Line)のバックパックについて詳しく見ていきましょう。
ラインナップには45L、25L、18Lがありますが、日本のユーザー環境において最も「潰しが効く」サイズである18Lモデルを中心にレビューします。これまでの「重くて四角い」ピークデザインのイメージを根底から覆す、驚きの仕上がりになっています。
✅18Lと25Lの違いやサイズ感を比較
✅14インチパソコン収納と仕事での使用感
✅登山リュックとしての背負い心地を評価
✅バックパックの防水性能や素材の特徴
✅実際に使ってみて感じたメリットとデメリット
18Lと25Lの違いやサイズ感を比較

購入を検討する際、多くの人が直面するのが「18Lと25L、どっちにするか問題」です。容量差は7リットルですが、この2つのモデルは単なるサイズ違いではなく、「バッグとしての構造と役割」が根本的に異なります。ここを理解せずに選ぶと、購入後に「使いにくい」と感じてしまう原因になります。
構造上の決定的な違い:パネル vs ロールトップ
25Lモデル(および45Lモデル)は、開口部に「ロールトップ」を採用しています。袋の上部をクルクルと巻いてバックルで留める方式で、荷物が増えた時に拡張できるのが最大のメリットです。
しかし、日常使いにおいては「メイン気室へのアクセスに手間取る」というデメリットがあります。いちいちバックルを外し、巻きを解く動作は、頻繁に物の出し入れをする街中ではストレスになりかねません。
対して、筆者が強くおすすめする18Lモデルは「パネルローディング」を採用しています。これは大きなU字型のジッパーで、フードを開けるようにガバっとメイン気室にアクセスできる仕組みです。この「ワンアクションで中身が見渡せる」利便性は、通勤や通学、カフェでの作業といった日常シーンで圧倒的な使いやすさを発揮します。
サイズ感と取り回しの良さ

18Lモデルのサイズ感は、身長170cm前後の日本人男性が背負って「背中からはみ出さない」絶妙なコンパクトさです。
電車内でバックパックを前に抱えた時も、顎の下に収まりが良く、視界を遮りません。一方で25Lモデルは縦に長く、ロールトップを伸ばすとさらに高さが出るため、小柄な方や女性が背負うと「バッグに背負われている感」が出やすい傾向にあります。
- 18Lモデルを選ぶべき人:「通勤と日帰りハイクを1つのバッグで済ませたい」「荷物の出し入れ頻度が高い」「電車移動がメイン」
- 25Lモデルを選ぶべき人:「防寒着や調理器具などかさばる荷物が多い」「1泊程度の小屋泊登山も視野に入れたい」「荷物量に応じてサイズを変えたい」
「大は小を兼ねる」と考えがちですが、こと今回のアウトドアラインに関しては、ロールトップの25Lは中身がスカスカだと形が崩れやすいため、荷物が少ない日は18Lの方が圧倒的にスタイリッシュに決まります。
14インチパソコン収納と仕事での使用感

「アウトドアバックパック」という名称ですが、その軽量さとシンプルなデザインから、ビジネスユースを考えている方も多いはずです。特に気になるのがPC収納の可否とその実用性です。
14インチMacBook Proの収納検証
公式スペックでは「13インチ推奨」と控えめな表記になっていますが、筆者の実機検証では、14インチのMacBook Pro(M1/M2/M3 Proモデル)も問題なく収納可能でした。メイン気室内部の背面側に、ハイドレーション(水袋)兼用のスリーブがあり、ここにPCを差し込む形になります。
ただし、このスリーブは「PC専用」として設計されているわけではなく、クッション性は最低限です。
また、底面が地面に直接触れないような「底上げ構造(false bottom)」にはなっていないため、バッグを床に置く際は「ドンッ」と衝撃を与えないよう注意が必要です。心配な方は、薄手のPCスリーブに入れてから収納することをおすすめします。
16インチのMacBook Proに関しては、「無理やり押し込めば入る」レベルです。角がジッパーラインに干渉し、開閉が非常にスムーズでなくなる上に、背負った時に背中に硬い板が当たっているような違和感が生じます。日常的に16インチを持ち歩くなら、素直に25Lか45L、あるいはエブリデイバックパックを選ぶべきです。
仕事道具としての使い勝手

実際に数週間、通勤に使ってみて感じたのは「軽さは正義」だということです。本体重量が900gを切っているため、PCや書類を入れても総重量が軽く、肩への負担が激減しました。また、外観がマットなブラック(Blackカラーの場合)であれば、テック系のオフィスカジュアルには違和感なく溶け込みます。
唯一の欠点は「自立しない」ことです。カフェやオフィスで足元に置くと、コロンと前に倒れてしまいます。これには「クリッパ(Bag Hanger)」などのバッグハンガーを常備してデスクに吊るす運用が必須となります。
登山リュックとしての背負い心地を評価

ピークデザインはカメラアクセサリーブランドとして有名ですが、今回のアウトドアラインでは「本気の登山リュック」としての性能を追求しています。その核心にあるのが、トレイルランニング用ベストから着想を得たという独自のハーネスシステムです。
「背負う」ではなく「着る」感覚
一般的な登山リュックのショルダーハーネスは、厚いウレタンパッドで肩に荷重を乗せる構造ですが、このバックパックは「幅広で薄いメッシュ素材」を採用しています。これにより、荷重を肩の一点ではなく、鎖骨から胸にかけての「面」で分散させることができます。
実際に7kg程度の荷物を入れて奥武蔵・正丸峠などのコースを歩いてみましたが、従来のリュックで感じていた「肩への食い込み」が驚くほど軽減されていました。ハーネス自体が通気性の高いメッシュなので、汗をかいても蒸れにくく、夏場のハイクでも快適性が維持されます。
ダブルスターナムストラップの効果
特徴的なのが、チェストストラップ(胸紐)が上下に2本装備されている点です。これを両方留めると、バッグが体に完全にロックされ、走ったり岩場を登ったりしても揺れが最小限に抑えられます。
街使いでは1本だけ使い、もう1本は取り外しておくことも可能ですが、登山時にはこの「ダブルロック」が絶大な安定感をもたらしてくれます。ただし、フレームレス構造(背面に硬い板が入っていない)であるため、パッキングのスキルが多少求められます。
背中側にゴツゴツしたカメラやレンズを配置してしまうと、それがダイレクトに背中に伝わります。ハイドレーションスリーブにPCを入れるか、あるいはウレタンマットの座布団などを背中側に入れることで、擬似的なフレームを作り出すのがコツです。
※↑↑これ、結構効果的です。(笑)
バックパックの防水性能や素材の特徴

今回、ピークデザインは素材を一新しました。これまで使用していた「400Dナイロンキャンバス」から、より軽量でテクニカルな「Terra Shell™ 210D リップストップナイロン」への変更です。
Terra Shell™の実力
この新素材は、100%リサイクルナイロンを使用しており、環境負荷への配慮がなされています。210デニールという厚さは、一般的なウルトラライト(UL)系ザックと同等クラスで、岩場での擦れや藪漕ぎにも十分耐えうる強度を持っています。
表面にはPFASフリーの撥水加工、裏面にはPUコーティングと防水処理が施されているため、耐候性は非常に高いです。
実際に小雨の中で1時間ほど歩きましたが、水滴は玉のように弾かれ、内部への浸水は皆無でした。止水ジッパー(UltraZip)の噛み合わせも非常にタイトで、通常の雨ならレインカバーは不要と言い切れます。
ピークデザインは製品のライフサイクル全体での環境負荷低減に取り組んでおり、このTerra Shell™素材もブルーサイン認証済み、かつ有害なPFAS(有機フッ素化合物)を使用しない撥水加工を採用しています。自然を楽しむための道具が自然を汚さない、という姿勢は信頼できますね。
※筆者は念の為、ピークデザイン製バックパック用(レイン フライ・15-20Lサイズ対応)のレインカバーを携帯しています。
メンテナンスと経年劣化
ナイロン素材特有の「加水分解(内側のコーティングがベタベタになる現象)」が気になるところですが、ピークデザインは高耐久のコーティング技術を採用しており、長期的な耐久テストもクリアしているとのこと。
また、汚れが付いた場合も、濡れた布でサッと拭き取れるメンテナンス性の良さも魅力です。ただし、明るいカラー(Cloud)は泥汚れが目立ちやすいため、汚れを気にする方は濃色(BlackやEclipse)を選ぶのが無難でしょう。
実際に使ってみて感じたメリットとデメリット

数週間、オンとオフの両方で使い倒して見えてきた、忖度なしのメリットとデメリットを詳細にまとめます。
| メリット(ここが最高) | デメリット(ここは我慢が必要) |
|---|---|
| 圧倒的な軽さ(約880g): エブリデイバックパックの約半分の重量。1日背負っても疲れの質が違う。 | 自立しない: 底面が柔らかいため、置くと必ず倒れる。カフェでの置き場所に困る。 |
| ベスト型ハーネスのフィット感: なで肩でもずり落ちず、体に吸い付くような一体感がある。 | サギング(型崩れ)問題: 中身が少ないと上部が折れ曲がり、見た目が悪くなることがある。 |
| アクセスの速さ: パネルローディング式は、底の荷物も一瞬で取り出せる。 | 保護力の低さ: カメラを入れるなら別売りのキューブが必須。単体ではクッション性ゼロ。 |
| 拡張性の高いループ: 外側のコードフックを使えば、ジャケットや三脚を自由に取り付け可能。 | コストがかさむ: 本体+カメラキューブ+ヒップベルトと揃えると、かなりの高額になる。 |
サギング(型崩れ)への対処法
デメリットとして挙げた「サギング」ですが、これはパッキングの工夫である程度解消できます。ポイントは「バッグのシルエットを整える芯」を入れることです。PCを持ち歩かない日でも、薄いプラスチックのまな板や、硬めのドキュメントケースを背中側に入れるだけで、バッグがシャキッとして背負い心地も向上します。
ピークデザインのアウトドア(スリング/バックパック):使用感レビュー

次に、バックパックと同時にリリースされた「Outdoor Sling 4L」について深掘りします。既存のエブリデイスリング(3L, 6L, 10L)と比較されがちですが、これは全く別の目的で作られた「尖った製品」です。保護よりも機動力を最優先するフォトグラファーに向けた、挑戦的な仕様を紐解きます。
✅スリング4Lの容量とカメラ収納の実例
✅実際にカメラが入らない場合の対策
✅ベルロイ製品とスリングを比較検証
✅ストラップの調整機能と使用感を解説
✅まとめ:ピークデザインのアウトドア(スリング/バックパック)レビュー
スリング4Lの容量とカメラ収納の実例

「4L」という容量は、数字だけ見ると小さく感じますが、マチ(厚み)がない袋状の構造のため、意外と物は入ります。しかし、カメラバッグとして使う場合は「入る限界」を知っておく必要があります。
収納できる機材の具体例
- 余裕で収納可能(+財布やスマホ):
- FUJIFILM X100VI / X100V
- Ricoh GR III / IIIx
- Sony α6700 + E PZ 16-50mm
- Leica Q3
- ジャストサイズ(カメラのみ):
- Sony α7 IV + FE 40mm F2.5 G(レンズフード順付け)
- Sony α7C II + FE 20-70mm F4 G(ギリギリ)
- Nikon Zf + 40mm SE
- 収納困難(実用的ではない):
- Canon EOS R5 / R6クラスの大型ボディ
- 大三元レンズ(24-70mm F2.8など)を装着した状態
- バッテリーグリップ付きのボディ
このスリングの最適な用途は、「コンパクトなミラーレス機+単焦点レンズ」で軽快にスナップ撮影をするスタイルです。あるいは、バックパックの中にメイン機材を入れ、このスリングには交換レンズを2本入れてお腹側に持つ、という「レンズ交換用バッグ」としての運用も非常に理にかなっています。
実際にカメラが入らない場合の対策

「自分のカメラが入るか微妙だ」「保護パッドがないのが不安」という声も多く聞かれます。公式では別売りの「X-Small Camera Cube」が対応していると謳われていますが、実際にこれを入れるとバッグ内がキューブだけでパンパンになり、財布すら入らなくなります。出し入れの摩擦も大きく、実用性は低いです。
「カメララップ」運用のすすめ
そこで筆者が強く推奨するのが、「カメラキューブを使わず、カメララップ(保護布)で包んで入れる」という方法です。ピークデザインからも発売されていますし、Domkeや無印良品の製品でも構いません。
カメラをラップで包むことで、最低限の擦り傷防止は確保しつつ、キューブのような硬い枠がないため、バッグの形状に合わせて柔軟に収納できます。これにより、スペック上はギリギリのサイズでも、意外とすんなり収まることが多いのです。

このスリングを使うなら、「カメラは過保護に守るもの」という考えを捨て、「道具として使い倒す」という意識が必要です。多少の衝撃は自分の体で吸収し、その分、圧倒的な軽快さを手に入れる。それがこのOutdoor Slingの正しい楽しみ方です。
ベルロイ製品とスリングを比較検証
「おしゃれで機能的なスリング」といえば、Bellroy(ベルロイ)のVenture Slingシリーズが強力なライバルです。どちらを買うべきか悩んでいる方のために、比較表を作成しました。
| 比較項目 | Peak Design Outdoor Sling 4L | Bellroy Venture Sling 6L |
|---|---|---|
| 重量 | 超軽量 (約185g) 持っていることを忘れるレベル。 | 普通 (約345g) しっかりとした生地感と部品の重さがある。 |
| 防水性能 | 非常に高い 止水ジッパーと防水加工で雨に強い。 | 日常レベル 撥水程度。長時間の雨には弱い。 |
| 拡張性 | 固定(薄型) 荷物が増えてもマチは広がらない。 | 可変(ガセット構造) 荷物量に合わせて底のマチが広がる。 |
| デザイン | テクニカル・スポーティ アウトドアウェアに合う機能美。 | カジュアル・アーバン 街着やコートにも合う都会的な印象。 |
選ぶ基準は「汗と雨」

結論として、登山やフェス、あるいは自転車移動など、汗をかいたり雨に降られたりする可能性があるシーンでは、ピークデザイン一択です。
丸洗いできるほどのタフさと、蒸れにくい背面構造はアウトドアブランドならではです。逆に、完全に街使いのみで、ファッション性を重視し、もう少し荷物を入れたいならベルロイの方が満足度は高いでしょう。
ストラップの調整機能と使用感を解説

ピークデザイン製品の真骨頂は、やはりストラップのギミックにあります。今回のOutdoor Slingでも、その優秀さは健在です。
進化した「Cord Hook」システム
ストラップの接続部分には、従来のアンカーリンクスではなく、新しい「Cord Hook(コードフック)」システムが採用されています。
これはトグル(留め具)をループに通すだけの単純な構造ですが、引っ張る力に対して非常に強く、外れる心配はありません。何よりプラスチック部品が最小限になり、軽量化に貢献しています。
瞬間伸縮機構
指一本でストラップの長さを調整できる「Quick-Adjusting」機構は非常にスムーズです。撮影ポイントまではストラップを縮めて体に密着させ、撮りたい瞬間にサッと緩めてカメラを構える。この一連の動作がノーストレスで行えます。
ウエストバッグ(ファニーパック)としての活用
ストラップを限界まで短くし、余った紐をバッグ背面の専用ポケットに隠せば、ウエストバッグに変身します。
これは登山の際、バックパックのウエストベルトと干渉しない位置(お腹の前)にセットする「カンガルースタイル」に最適です。行動食やスマートフォン、地図を入れておけば、歩きながら必要なものにすぐにアクセスでき、登山の快適性が劇的に向上します。
まとめ:ピークデザインのアウトドア(スリング/バックパック)レビュー

ピークデザインのアウトドアライン(Outdoor Line)は、これまでの「カメラバッグ=重くて頑丈で四角い」という常識を真っ向から否定する、ブランドの新しい挑戦です。
18Lバックパックは、パネルローディングによるアクセスの良さと、ベスト型ハーネスによる「着るような背負い心地」を両立しており、平日も休日もアクティブに動く人にとって理想的な「クロスオーバー」バックパックです。自立しない点や、パッキングにコツが要る点など、使い手を選ぶ側面はありますが、それが気にならないほどの軽快さを提供してくれます。
また、スリング4Lは保護力を犠牲にしてでも軽さを手に入れたい撮影者にとって、唯一無二の選択肢です。「カメラは裸で持ち歩くのが一番速い」というアグレッシブなスタイルに共感できるなら、これ以上の相棒はいません。
決して万人向けの「優等生」なバッグではありません。しかし、自分のスタイルを理解し、道具に合わせて工夫できるユーザーにとっては、撮影と冒険の自由度を劇的に広げてくれる、最強のツールとなるでしょう。






















