「トレイルブレイザーのデザインが気に入ったけれど、サイズ選びで絶対に失敗したくない」
「通勤ランで使いたいけれど、ノートパソコンを入れて走っても大丈夫なのか不安」
「登山用として使うには、少し頼りないのではないか?」
サロモンの人気バックパック「トレイルブレイザー(TRAILBLAZER)」シリーズを検討する際、このような疑問を持つ方は非常に多いはずです。特に10L、20L、30Lという3つのサイズ展開は、一見すると単なる容量の違いに見えますが、実はそれぞれのモデルで「得意とするフィールド」や「背負い心地」が大きく異なります。
私自身、長年このシリーズを愛用し、街中でのランニングから週末の低山ハイク、さらには1泊の旅行まで使い倒してきました。その経験から言えるのは、このザックは「選び方さえ間違えなければ、最強の相棒になる」ということです。
この記事では、カタログスペックだけでは分からない実際の使用感や、長く使うためのメンテナンス方法まで、徹底的に深掘りして解説します。
この記事でわかること
①10L・20L・30Lのスペック比較とサイズの選び方
②パソコンを安全に運ぶためのパッキング術と揺れ対策
③登山で疲れないための裏技的パッキング方法
④「洗濯機NG」の理由と自宅でできるメンテナンス手順
サロモンのトレイルブレイザー10・20・30:レビュー詳細

それでは早速、各モデルの詳細なレビューに入っていきましょう。単なる「良い・悪い」ではなく、「どのようなシーンで真価を発揮するのか」という視点で、具体的なエピソードを交えながら解説していきます。
✅10L・20L・30Lのサイズ感と容量の違い
✅通勤ランでのパソコン収納と揺れ具合
✅登山やハイキングでの使用感と適性
✅防水性能の限界と雨天時の対策
✅洗濯方法と長く使うメンテナンス術
10L・20L・30Lのサイズ感と容量の違い

まず最初に直面するのが「サイズ選び」の壁です。容量の数字だけを見れば「大は小を兼ねる」と考えがちですが、トレイルブレイザーに関してはその法則は当てはまりません。なぜなら、10Lモデルと20L/30Lモデルでは、基本的な構造設計そのものが異なるからです。
【10Lモデル】ミニマリストのための「背負うベスト」
TRAILBLAZER 10は、シリーズの中で最も特異な存在です。最大の特徴は、ウエストベルト(腰紐)にパッドがなく、細いウェビングテープのみで構成されている点です。これは、重い荷物を腰で支えることを最初から想定しておらず、あくまで「走る時にザックが左右に振れるのを防ぐ」ためのスタビライザーとしての役割に特化しているからです。
容量の実感としては、1.5Lのハイドレーション、薄手のウインドブレーカー、スマートフォン、財布、鍵を入れると、もうメインスペースはいっぱいになります。
しかし、この「小ささ」こそが最大の武器です。背中の覆われる面積が圧倒的に小さいため、真夏のランニングでも熱がこもりにくく、背負っていることを忘れるほどの一体感があります。サイクリングや、短距離のトレイルランニングには最適ですが、街使いの「リュック」として考えると、少し収納力が物足りないでしょう。
【20Lモデル】全てが丁度いい「黄金比」スタンダード
TRAILBLAZER 20からは、ウエストベルトにしっかりとしたクッションパッドとジッパーポケットが装備されます。この変更は劇的です。荷重を腰骨に乗せて分散させることができるようになるため、肩への負担が大幅に軽減されます。
サイズ感としては、A4サイズの書類や13インチのノートPCがスムーズに収納でき、お弁当箱や水筒、着替えを入れてもまだ余裕があります。街中での普段使いから、日帰りのハイキングまで、最も幅広いシーンに対応できる「ど真ん中」のモデルです。
身長160cm前後の女性から180cm級の男性まで、不思議と誰が背負っても違和感のないサイズバランスに仕上がっている点も、設計の妙と言えるでしょう。
【30Lモデル】拡張された「旅と冒険」のプラットフォーム
TRAILBLAZER 30は、20Lの基本機能をそのままに、メインコンパートメントの「奥行き」と「高さ」を拡張したモデルです。背負った時の見た目は、20Lよりもひと回り大きく、明確に「登山ザック」らしいシルエットになります。
このプラス10リットルの恩恵を感じるのは、冬場の低山ハイクで「かさばるフリースやダウンジャケット」を持ち運びたい時や、ジム通いで「シューズとプロテインシェイカー、着替え一式」をまとめて入れたい時です。
また、1泊2日程度の旅行なら余裕でこなせます。ただし、荷物が少ない状態で30Lモデルを使うと、中身が中で暴れてしまい、重心が安定しないことがあります。そのため、常に荷物が多めの方以外は、20Lを選んだ方が取り回しは良いかもしれません。
| モデル | 特徴的な構造 | 容量の目安 | 最適なシーン |
|---|---|---|---|
| 10L | テープ式ウエストベルト (パッドなし) | 水、雨具、貴重品のみ | ショートラン、サイクリング、散歩 |
| 20L | パッド入りベルト +ジッパーポケット | A4書類、PC、着替え、弁当 | 通勤ラン、日帰りハイク、普段使い |
| 30L | 大容量メイン室 +トップポケット拡張 | 防寒着、シューズ、旅行用品 | 旅行、荷物多めの通勤、冬の低山 |
通勤ランでのパソコン収納と揺れ具合

近年、健康志向の高まりとともに増えている「通勤ラン(Run Commuting)」。サロモンのトレイルブレイザーは、この用途で検索されることが非常に多いザックです。そこで最大の懸念事項となるのが「ノートパソコンは入るのか?」「走って壊れないか?」という点でしょう。
PC収納のリアルなサイズ感
結論から申し上げますと、20Lおよび30Lモデルであれば、一般的なモバイルノートPCは収納可能です。内部にはハイドレーションパック(水袋)を吊るすためのスリーブ(内ポケット)があり、ここがPC収納スペースとして代用できます。
- 13〜14インチ(MacBook Air/Pro等): ケースに入れてもスムーズに出し入れ可能です。ジャストフィットと言って良いでしょう。
- 15.6インチ(一般的なビジネスノート): 収納自体は可能ですが、ザックの上部が丸みを帯びたデザインになっているため、PCの角が生地に干渉して少しパツパツになることがあります。
必須となる「揺れ」対策と保護
ただし、このザックにはPC専用の耐衝撃クッション(底面のバンパーなど)は一切ありません。背面のパッドも、通気性を重視した薄いフォーム材のみです。そのため、PCを裸のまま入れるのは自殺行為です。着地衝撃がダイレクトにPCに伝わってしまいます。
PCを守るための鉄則
必ず、耐衝撃性に優れた厚手の「ネオプレン製インナーケース」などにPCを入れてから収納してください。さらに、走る際はPCが背中で暴れないよう、サイドのコンプレッションストラップ(横のベルト)をきつく締め上げ、ザックの厚みを潰して中身を固定することが重要です。
ランニング時の安定性
実際にPC(約1.2kg)と着替えを入れて走ってみると、キロ5分半〜7分程度のゆっくりとしたジョグであれば、不快な揺れはかなり抑えられます。これは、トレイルランニング用ザックのノウハウを持つサロモンならではのハーネス形状と、チェストストラップの恩恵です。
ただし、本格的なスピード練習や、激しい上下動を伴うランニングには向きません。あくまで「移動手段としてのランニング」に適したレベルと考えてください。
登山やハイキングでの使用感と適性

次に、本来の用途である「アウトドア」での性能についてです。登山用品店に行くと、背面に金属フレームやメッシュパネルが入ったガッシリとしたザックが多く並んでいますが、トレイルブレイザーはそれらとは対照的な「フレームレス構造」を採用しています。
フレームレスが生む「自由」と「工夫」
このザックには、背骨となる硬い板が入っていません。そのため、手で丸められるほど柔らかく、非常に軽量(20Lで約414g)です。この軽さは、登りでの体力を確実に温存してくれます。また、身体の捻じれに合わせてザック全体が追従するため、岩場をよじ登るようなシーンでも動きを妨げません。
しかし、フレームがないということは「適当に荷物を詰めると、背負い心地が最悪になる」ということを意味します。例えば、カメラやバーナーなどの硬い物を無造作に入れると、それが背中にゴツゴツと当たって痛いですし、重い荷物が下の方に溜まって重心が後ろに引っ張られがちです。
快適さを生み出すパッキング技術
トレイルブレイザーを登山で快適に使うためには、少しのコツが必要です。それは「背中側に『仮想フレーム』を作る」ことです。
具体的には、折りたたみ式の座布団(シットマット)や、給水用のハイドレーションパック、あるいは綺麗に畳んだレインウェアなどを、一番背中側に平らになるように配置します。その外側に、重い荷物や硬い道具を入れるようにするのです。
こうすることで、ザック自体に擬似的な剛性が生まれ、驚くほど背負いやすくなります。この「道具を使いこなす感覚」も、フレームレスザックの醍醐味の一つと言えるでしょう。
もし、これから登山を始める方で「何を持っていくべきか分からない」という方は、まずは基本的な装備リストを確認し、それらが20Lに収まるかシミュレーションしてみることをお勧めします。
防水性能の限界と雨天時の対策

山の天気は変わりやすいもの。そこで気になるのが防水性能ですが、誤解を恐れずに言えば、トレイルブレイザーは「雨には弱い」と思っておいた方が安全です。
「撥水」と「防水」の決定的な違い
カタログには「撥水(Water Repellent)」と記載されていますが、これはあくまで「生地の表面で水を弾く」だけであり、「水の侵入を完全に防ぐ(Waterproof)」わけではありません。
小雨程度ならパラパラと弾いてくれますが、本降りの雨に打たれ続けると、縫い目やジッパーの隙間からじわじわと水が浸入してきます。特にメインジッパーは止水タイプではないため、ここが一番の弱点となります。
最強の雨対策「インナー防水」
別売りのザックカバー(レインカバー)を被せるのも一つの手ですが、強風で飛ばされるリスクや、装着の手間を考えると、最も確実なのは「ザックの中身を濡らさない」というアプローチです。
登山用品店で売られている「防水スタッフバッグ(ドライバッグ)」を用意し、絶対濡れてはいけない着替えや電子機器をその中に入れてからザックに収納します。
もし専用品が高価だと感じる場合は、厚手のビニール袋や、ジプロックのLサイズを二重にして使うだけでも十分な効果があります。私は常に、ザックの底に大きめのゴミ袋を1枚忍ばせています。これは急な雨の際のインナーライナーとしても、濡れたものを持ち帰る袋としても使える万能アイテムです。
洗濯方法と長く使うメンテナンス術

汗をたっぷり吸ったバックパック、そのまま放置していませんか?かと言って、洗濯機に放り込むのは絶対にNGです。ここでは、お気に入りのギアを長く使うための正しいメンテナンス方法を伝授します。
なぜ「洗濯機」を使ってはいけないのか?
サロモンの公式表示でも「Do Not Wash(洗濯不可)」となっています。これには明確な理由があります。
バックパックの生地の裏側には、防水性と強度を高めるための「ポリウレタン(PU)コーティング」という薄い膜が貼り付けられています。
このコーティングは水分や摩擦に弱く、洗濯機の激しい水流や脱水の遠心力、さらには洗剤の化学成分によって「加水分解」という劣化現象が加速してしまうのです。加水分解が進むと、コーティングがベタベタしたり、白い粉のようにボロボロと剥がれ落ちたりして、修復不可能になってしまいます。
公式情報による裏付け
サロモン公式サイトのプロダクトケアページでも、バックパックの手入れについては「ぬるま湯での手洗い」や「陰干し」が推奨されており、洗濯機の使用やアイロン、漂白剤の使用は禁止されています。
(出典:サロモン公式『製品のお手入れ方法』https://www.salomon.com/ja-jp/product-care)
正しい「お風呂場メンテナンス」手順
では、どうすれば良いのでしょうか。私が実践しているのは以下の手順です。
- 使用後は即乾燥: 帰宅したらすぐに中身を全て出し、全てのジッパーを開放して、風通しの良い日陰に吊るします。直射日光は生地を傷めるので避けましょう。私は扇風機をあてています。
- 部分洗い: 背面パッドやショルダーベルトなど、汗を吸いやすい部分を中心に、ぬるま湯を含ませたタオルでトントンと叩くように拭き取ります。
- 丸洗い(最終手段): 汚れや臭いがどうしても気になる場合のみ、バスタブにぬるま湯を張り、中性洗剤(おしゃれ着洗い用など)を極薄く溶かして、優しく押し洗いします。その後、洗剤が残らないよう徹底的にすすぎ、タオルで水分を吸い取ってから、数日間かけて完全に乾燥させます。
特にレインウェアなどの機能性ウェアと同様、正しいケア知識を持つことが道具の寿命を延ばします。
サロモンのトレイルブレイザー10・20・30:レビュー評価

ここまで、機能面や使い方のコツについてかなりマニアックに解説してきましたが、最終的に「買いなのか?」という点について結論を出したいと思います。競合製品との比較も含め、市場での立ち位置を明確にしていきましょう。
✅万能な20Lモデルが最もおすすめな理由
✅モンベルなど競合製品との比較
✅購入前に知りたいメリットとデメリット
✅総括:サロモンのトレイルブレイザー10・20・30のレビュー
万能な20Lモデルが最もおすすめな理由

もし、あなたが「初めてのアウトドア用リュックを探している」あるいは「普段使いと軽い運動を兼用できるバッグが欲しい」と考えているなら、迷わずTRAILBLAZER 20を選んでください。10Lでも30Lでもなく、20Lです。
最大の理由は、やはり「ウエストベルトのポケット」の有無です。10Lモデルにはこのポケットがありません。実際に使ってみると分かりますが、バックパックを下ろさずにスマホを取り出して地図を確認したり、走りながらエナジージェルを補給したり、家の鍵をサッと取り出したりできる利便性は、一度味わうと戻れません。
また、20Lという容量は、スーパーでの買い物(牛乳パックや野菜など)も十分に入りますし、日帰りの温泉セットも余裕です。それでいて電車の中で前抱えにしても邪魔にならないコンパクトさを維持しています。
この「生活に溶け込むサイズ感」と「アウトドアギアとしての機能性」のバランスにおいて、20Lモデルは他を圧倒しています。
モンベルなど競合製品との比較

もちろん、他ブランドにも優れた製品はあります。よく比較検討されるモデルとの違いを整理してみましょう。
vs モンベル(クロスランナーパック / ガレナパック)
日本が誇るモンベルは、圧倒的なコストパフォーマンスが魅力です。しかし、デザイン面では良くも悪くも「登山用品」という雰囲気が強く、スーツやオフィスカジュアルに合わせると少し浮いてしまうことがあります。
また、クロスランナーパックはランニングには最高ですが、荷物の出し入れ口が特殊だったりして、普段使いには慣れが必要です。
vs ノースフェイス(マーティンウィング / ワンマイル)
ノースフェイスはブランド力とデザイン性が抜群ですが、同等の機能を持つモデルを選ぼうとすると、価格がトレイルブレイザーの1.5倍〜2倍近くになることが多いです。また、ランニング特化モデルは競技志向が強く、PCや書類を入れることを想定していない形状のものが多いのが難点です。
vs OMM(Classic / Ultra)
「走れるザック」の最高峰と言われるOMMですが、これはある程度経験を積んだ玄人向けのギアです。価格も高く、素材もペラペラで使い手を選びます。最初の一つとして選ぶにはハードルが高いでしょう。
これらと比較して、サロモンのトレイルブレイザーは、「街でも浮かない洗練されたデザイン」「必要十分なランニング性能」「1万円以下で買える手頃な価格」という3点を高次元で満たしています。まさに「死角なしの優等生」と言えるでしょう。
購入前に知りたいメリットとデメリット

購入ボタンを押す前に、改めてメリットとデメリットを冷静に見極めておきましょう。買ってから「こんなはずじゃなかった」とならないために、包み隠さずお伝えします。
メリット(ここが最高!)
- 圧倒的な軽さ: 20Lで約414g。空の状態なら指一本で持てる軽さは、毎日の通勤において正義です。
- 高コスパ: 海外ブランドのバックパックとしては破格の安さ。ガシガシ使い倒せます。
- 万能デザイン: ロゴがシンプルで、アウトドアウェアだけでなく、Tシャツやパーカーなどの普段着にも違和感なく馴染みます。
- 高いフィット感: サロモン独自の「3D Comfort」システムにより、背中に吸い付くような背負い心地を実現しています。
デメリット(ここは妥協が必要)
- 自立しない: フレームが入っていないため、床に置くとクタッと倒れます。カフェなどで置き場所に困ることがあります。
- 背中の蒸れ: 通気性の良いメッシュ素材を使用していますが、背面とザックが密着する構造のため、夏場のランニングでは背中が汗でびっしょりになります。着替えの持参は必須です。
- 剛性不足: 重い荷物(5kg以上)を入れると、ショルダーハーネスが肩に食い込みやすくなります。あくまでライト&ファストな用途向けです。
総括:サロモンのトレイルブレイザー10・20・30のレビュー
結論として、サロモンのTRAILBLAZERシリーズは、何か一つの機能に特化したスペシャリストではありません。しかし、通勤、ランニング、ハイキング、旅行、フェスと、あらゆるシーンで及第点以上のパフォーマンスを発揮してくれる「究極のユーティリティ・ギア」です。
「今日は仕事終わりに一駅分走って帰ろうかな」
「今度の休みは、近くの山まで足を伸ばしてみようかな」
そんなふうに、あなたの日常と非日常をシームレスに繋いでくれる架け橋のような存在になるはずです。特に20Lモデルは、最初のアウトドアザックとして、あるいはベテランハイカーのサブザックとして、自信を持っておすすめできる名品です。
ぜひ、この軽さと快適さを体感して、新しいアクティビティへの扉を開いてみてください。
免責事項
本記事に記載された仕様、価格、および評価は、執筆時点での公開情報および筆者個人の実体験に基づいています。製品の仕様変更や価格改定が行われる可能性があるため、購入時には必ずメーカーの最新公式情報を確認してください。また、PCの収納可否などはケースのサイズやPCの形状にもよりますので、可能な限り実店舗での試着・確認を強く推奨します。
























