山好きの皆さん、こんにちは。憧れのスポルティバのアプローチシューズ、いざ買おうとするとTX4とTX5の違いが分からなくて悩みますよね。筆者も最初は数字が大きいTX5の方が上位モデルなのか、それとも用途が全く違うのか判断がつかずに迷いました。
ネットで調べるとTX4は泥や草付きで滑るという噂があったり、最新モデルTX4 Evoでサイズ感が激変したり、TX5とのサイズ感の違いや普段履きできるかどうかなど、気になるポイントがたくさん出てきます。決して安い買い物ではないからこそ、自分のスタイルに合った一足を慎重に選びたいものです。
この記事でわかること
①岩場に強いTX4と土の道に強いTX5の決定的な性能差
②泥汚れや濡れた路面で滑りやすいモデルとその理由
③最新モデルTX4 Evoで激変したサイズ感と注意点
④登山スタイルに最適な一足を選ぶための判断基準
スポルティバのTX4とTX5の違い:性能面から徹底比較

冒頭でも触れましたが、TX4とTX5は「兄弟モデル」というよりも、それぞれが全く異なるミッションを背負った「スペシャリスト」だと考えたほうがいいです。この2つのモデルは、スポルティバが長年培ってきた異なるカテゴリーの技術(DNA)をベースに開発されています。
具体的には、TX4はクライミングシューズの名作「Mythos(ミトス)」の系譜を継いでおり、岩場での繊細な操作性を重視しています。一方で、TX5は登山靴の「Trango(トランゴ)」シリーズの構造を取り入れ、歩行の安定性とプロテクション機能を強化しています。
ここでは、アッパーの素材からソールの形状に至るまで、その決定的な違いを構造工学的な視点も交えて深掘りしていきます。
✅登山で使うならどちらがおすすめか
✅TX4は泥や草付きで滑るのか
✅ゴアテックス搭載による防水性の差
✅ソール交換と耐久性の比較
登山で使うならどちらがおすすめか

「これから北アルプスの縦走に使いたいんだけど、どっちがいい?」といった質問を時々受けますが、筆者はいつも「足元にあるのは岩か、それとも土か?」という基準で判断することをおすすめしています。
TX4:岩場特化型の「登れる靴」
TX4の最大の魅力は、クライミングシューズ譲りの圧倒的な足裏感覚です。アッパーには柔軟なスエードレザーを採用しており、履き込むほどに革が伸びて、自分の足型に吸い付くような「第2の皮膚」へと進化していきます。
また、つま先から踵までを一本の紐で締め上げる「Mythosレーシングシステム」により、足全体を均一にホールドできるため、岩角に立ち込むようなシーンでも靴の中で足がズレません。岩稜帯が多いルートや、クライミングエリアへのアプローチには最適です。
TX5:全地形対応型の「歩ける要塞」
対するTX5は、重いバックパックを背負って長時間歩くことを想定した設計です。アッパーには厚みのあるヌバックレザーを使用し、足全体を剛性の高い「殻」で守るような構造になっています。
これにより、不整地で足がねじれるのを防ぎ、疲労を軽減してくれます。岩場だけでなく、樹林帯の木の根、砂利道、泥濘など、登山で遭遇するあらゆる路面に対応できる汎用性の高さが売りです。
ここがポイント
自分の足で岩を掴む感覚を楽しみたいならTX4、荷物が重いテント泊や長距離の縦走で足を守りたいならTX5を選ぶのが正解です。
TX4は泥や草付きで滑るのか

これはTX4の購入を検討している方が最も懸念するポイントでしょう。結論から正直にいうと、TX4は、粘土質の泥道や濡れた草付き斜面においては、明確に滑りやすいです。
この理由は、アウトソール(靴底)のラグパターンの違いにあります。
🔶TX4(ドットソール): TX4のソールには、丸いドット状の浅いラグが配置されています。これは、乾いた岩やスラブ(一枚岩)に対して接地面積を最大化し、吸盤のように張り付くための設計です。
しかし、この形状は泥はけが悪く、粘土質の土の上では溝がすぐに埋まってしまい、まるで「スリックタイヤ」のような状態になって摩擦力を失ってしまうのです。
🔶TX5(ラグパターン): 一方、TX5は登山靴らしい深くて大きなブロック状のラグを採用しています。
さらに、踵部分には「インパクトブレーキシステム」と呼ばれる、斜めに配置されたラグがあり、これが地面に食い込むことで強力な制動力を発揮します。下り坂で「ズリッ」といく恐怖感は、TX5の方が圧倒的に少ないです。

注意点
低山の樹林帯や雨上がりの登山道がメインフィールドになる場合は、TX4のドットソールはリスクになります。その場合は、泥抜けの良いソールを持つTX5の方が安全です。
ゴアテックス搭載による防水性の差
山の天気は変わりやすいもの。防水性能の有無も、靴選びの大きな分かれ道になります。
TX5は、ローカット・ミッドカット問わず、基本的にすべてのモデルで「GORE-TEX Extended Comfort」ライニングを標準装備しています。これは完全防水でありながら、激しい運動でも内部の蒸れを逃がすように設計されています。
雨の中の行軍や、朝露に濡れた草原、ぬかるみを通過する際も、靴下が濡れる不快感や冷えから足を守ってくれる安心感は絶大です。
一方、TX4(オリジナルモデル)は、基本的に非防水仕様です(※TX4 GTXという防水モデルも存在しますが、基本は非防水が主流)。これは、スエードレザー本来の通気性を最大限に活かすためです。
夏場の暑い時期のアプローチや、運動量が非常に多いシーンでは、防水フィルムがない分、圧倒的に蒸れにくく快適です。濡れることを前提に、乾きやすさを優先するという玄人好みの選択とも言えます。
ソール交換と耐久性の比較
高価なアプローチシューズですから、できるだけ長く履き続けたいですよね。ここでは耐久性と、最近のアウトドア業界で注目されている「リソール(靴底交換)」について解説します。
TX5:堅牢なヌバックと伝統的な耐久性
TX5に使用されているヌバックレザーは、スエードよりも繊維の密度が高く、傷や摩擦に強いのが特徴です。
さらに、靴の周囲をラバーランドで補強しているため、岩角にぶつけてもアッパーが破れることは稀です。適切なワックスメンテナンスを行えば、5年、10年と付き合っていけるポテンシャルを持っています。
TX4 Evo / TX4 R:革新的な「リソールプラットフォーム」

ここで注目したいのが、最新モデルである「TX4 Evo」や「TX4 R」に搭載された新技術です。
従来のアプローチシューズのリソールは、古いソールを削り取る際にミッドソール(クッション層)まで傷つけてしまうことが多く、性能が変わってしまうため回数制限がありました。しかし、TX4 Evoには、アウトソールとミッドソールの間に「Resole Platform(リソールプラットフォーム)」と呼ばれる特殊な層が挟み込まれています。
これにより、リソール時にはプラットフォームから下だけを綺麗に剥がすことができ、靴のクッション性や剛性を損なうことなく、何度でもソール交換が可能になりました。これは環境にもお財布にも優しい、素晴らしい進化です。(出典:スポルティバジャパン公式サイト)
知っ得情報
TX4 Evoは初期投資こそ必要ですが、リソールを繰り返して長く履くことを考えると、トータルのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
スポルティバのTX4とTX5の違い:サイズ感と選び方

スペックの違いが理解できたところで、次に立ちはだかる最大の壁が「サイズ選び」です。特にスポルティバはイタリアのブランドなので、日本の靴とはサイズ感が異なります。
さらに、モデルによって採用している「ラスト(足型)」が全く違うため、同じEU41でも履き心地が別物ということが多々あります。
✅幅広かタイトかサイズ感の決定打
✅TX4 Evoでの変更点と注意点
✅普段履きとしても使えるモデルは
✅まとめ:スポルティバのTX4とTX5の違い
幅広かタイトかサイズ感の決定打

日本人の足は「幅広・甲高」が多いと言われていますが、この特徴を持つ方にとって、従来のTX4(オリジナル)はまさに「神シューズ」でした。「Traverse Last(トラバース・ラスト)」と呼ばれる足型を採用しており、つま先部分(トゥボックス)に非常にゆとりがあります。
指先が自然に広がり、地面を掴む感覚が得られるため、普段のスニーカーと同じサイズ、あるいはハーフサイズダウンでも快適に履けるほどでした。
対してTX5は、「Approach/Technical Last」を採用しており、全体的にタイトでフィット感重視の設計です。重い荷物を背負った時に足が靴の中で遊ばないよう、中足部から甲にかけてしっかりと締め付けられます。
そのため、多くのユーザーが「小指が当たる」「きつい」と感じやすく、厚手のトレッキングソックスを履くことを考慮して、TX4よりもハーフサイズ(0.5cm)からワンサイズ(1.0cm)アップを選ぶのがセオリーとなっています。
TX4 Evoでの変更点と注意点

ここで、これから購入する方に絶対に伝えておきたい警告があります。それは、後継機である「TX4 Evo」のサイズ感についてです。
「TX4と同じサイズでいいだろう」と思ってネットでポチると、高確率で失敗します。なぜなら、Evoモデルになってからラストが再設計され、かなりタイトなフィット感に変更されたからです。
具体的な変更点は以下の通りです。
- 全長の短縮: 同じEUサイズ表記でも、靴の内部の長さ(捨て寸)が短くなっています。
- 幅の狭小化: トゥボックスのボリュームが削ぎ落とされ、よりクライミングシューズに近い、タイトな設計になりました。
- 剛性の向上: アッパーがしっかりとした作りになった分、履き始めの硬さを感じやすくなっています。
サイズ選びの注意
旧TX4ユーザーがEvoに買い替える場合、最低でもハーフサイズ、多くの方はワンサイズアップが必要になります。こればかりは「履いてみないと分からない」部分が大きいので、必ず実店舗で試着するか、返品交換可能なショップを利用してください。
普段履きとしても使えるモデルは

高機能なシューズですから、山だけでなく街でも履きたいという気持ち、よく分かります。ファッションの観点から見るとどうでしょうか。
普段履きにおすすめなのは、断然TX4シリーズです。
スエードの温かみのある質感や、ポップなカラーリングはデニムやチノパンとの相性が抜群です。特に「TX4 R(レトロ)」は、80年代のクライミングブームを彷彿とさせるクラシックなデザインで、街中で履いていても違和感がなく、むしろ非常におしゃれです。
一方、TX5は、機能美としては素晴らしいですが、見た目がいかにも「ガチの登山靴」です。
ソールも硬く、アスファルトの上を歩くと「カツカツ」と硬い音がしますし、屈曲性が低いので平地を長時間歩くと逆に疲れてしまうかもしれません。キャンプや野外フェスのようなアウトドアシーンならアリですが、ショッピングや通勤には少々オーバースペックと言えるでしょう。
まとめ:スポルティバのTX4とTX5の違い
最後に、TX4とTX5の違いを整理して比較表にまとめました。あなたの用途にはどちらが合っているか、最終確認に使ってください。
| 比較項目 | TX4 (Evo含む) | TX5 GTX |
|---|---|---|
| コンセプト | 岩場特化型(登れる靴) | 全地形対応型(歩ける要塞) |
| 得意な地形 | 岩場・スラブ・乾燥した道 | 土・泥・砂利・濡れた道 |
| ソール特性 | ドットソール(面で止める) ※泥詰まりに注意 | ラグパターン(点で刺さる) ※泥抜けが良い |
| フィット感 | 旧: ゆったり / Evo: タイト | 全体的にタイト・ホールド感強 |
| 防水性 | 基本なし(通気性重視) | あり(GORE-TEX標準) |
| こんな人におすすめ | 岩稜帯に行く人、クライマー | 縦走登山、初心者ハイカー |
結局のところ、「スポルティバ TX4 TX5 違い」を知りたがっているあなたが選ぶべき一足は、「あなたが歩く道の路面状況」によって決まります。
岩場でのダイレクトな操作感や、自分の足で登る楽しさを求めるならTX4。天候や路面状況を気にせず、重い荷物を背負ってどんな山でも安定して歩きたいならTX5。
この基準で選べば、きっと後悔しない最高の相棒が見つかるはずです。ぜひ、あなたにぴったりの一足を見つけて、安全で楽しい山旅に出かけてくださいね。
※本記事の情報は執筆時点のものです。足の形には個人差がありますので、正確なフィット感の確認は実店舗での試着を推奨します。























