山歩きをより快適にしてくれるトレッキングポールですが、いざ買おうと思っても「自分の身長にはどの長さが合うの?」と迷ってしまいますよね。
実は、トレッキングポールの長さの選び方を間違えてしまうと、腕が疲れやすくなったり、膝への負担をうまく軽減できなかったりすることもあるんです。
今回は、初心者の方でも失敗しないための基準や目安、登り下りでの調整方法、さらにはカーボンやアルミといった素材ごとの特徴についても、筆者の視点でお伝えしていきます。この記事を参考に、自分にぴったりの相棒を見つけてみてくださいね。
この記事でわかること
①身長や肘の角度から導き出す最適な基準
②登り坂と下り坂で長さを変えるべき理由
③T型とI型グリップによる使い分けと選び方
④素材や構造が歩行時の疲れに与える影響
トレッキングポールの長さの選び方:計算式の基本

まずは、自分にとっての「基準となる長さ」を知ることから始めましょう。
計算式を知っておくと、実物を触れない通販での購入時や、レンタルを利用する際にも目安が立てやすくなって安心ですよ。ここでは、身体データに基づいた数値的なアプローチを深掘りしていきます。
✅身長から算出する目安の計算式
✅初心者が意識すべき肘の角度と目安
✅登りと下りで変える斜度に応じた調整
✅1本で使うT型グリップの適切な長さ
身長から算出する目安の計算式

トレッキングポールの長さを決める際、最も一般的で信頼されているのが身長に特定の係数を掛ける方法です。筆者が多くのメーカーやガイドの資料を比較したところ、標準的な登山やトレッキングであれば、「身長 × 0.63」という数値が最もバランスの良い第一近似値になります。
この「0.63」という数字は、平地でポールを突いた際に肘がわずかに90度より開く設定を指しています。これにより、腕全体の筋肉をリラックスさせつつ、適度な安定感を得られるようになっているんですね。
一方で、もっと積極的に上半身の力を使って推進力を得たいノルディックウォーキングのようなスタイルでは「身長 × 0.65」という少し長めの設定が推奨されることもあります。また、急勾配の登攀をトレーニング目的で行うような上級者の間では、あえて高い位置に突くために「0.67〜0.68」という係数を使うケースも見られます。
【用途別】身長とポールの長さ目安シミュレーション
| 身長 (cm) | 標準的な登山 (×0.63) | 推進力重視 (×0.65) | 急勾配・上級 (×0.68) |
|---|---|---|---|
| 150 | 約94.5cm | 約97.5cm | 約102.0cm |
| 155 | 約97.7cm | 約100.8cm | 約105.4cm |
| 160 | 約100.8cm | 約104.0cm | 約108.8cm |
| 165 | 約104.0cm | 約107.3cm | 約112.2cm |
| 170 | 約107.1cm | 約110.5cm | 約115.6cm |
筆者が個人的に思うのは、初めての一本を選ぶなら、この「目安表」の中央値付近が自分の調整範囲内に収まっているモデルを選ぶのがベストかなということです。例えば、計算上の目安が105cmなら、90cm〜120cmまで調整可能なポールを選べば、どんな斜面でも対応できますよね。
数値に縛られすぎず、あくまで「自分の可動域を確保するための指標」として捉えるのが、スマートな選び方のコツと言えるでしょう。
初心者が意識すべき肘の角度と目安
計算式よりも直感的で、かつ個人の体型差(腕の長さや肩幅)を完璧にカバーできるのが、実際にポールを持って「肘の角度」をチェックする方法です。
計算式はあくまで平均的な体型を前提としたものですが、人間は一人ひとり腕の長さが違います。だからこそ、最終的には自分の身体で確認するのが一番確実なんです。
やり方はとても簡単です。まず平地でグリップを正しく握り、ポールの先端(バスケット付近)を足の横に突いて直立してみてください。
このとき、肘がちょうど90度(直角)に曲がる状態を、筆者は「ゼロポイント」と呼んでいます。このゼロポイントこそが、平地での歩行効率が最も高く、腕や肩への余計な負荷がかからない理想的なポジションになります。
なぜ「90度」が重要なのか?
肘が90度より大きく開いて腕が伸びきってしまうと、地面からの衝撃が直接肩や首に伝わりやすくなり、長時間の歩行ではひどい肩こりの原因になることがあります。
逆に肘が鋭角に曲がりすぎていると、常に力が入った状態になり、腕の筋肉が早期に疲労してしまいます。90度を基準にすることで、上腕三頭筋などの筋肉を最も効率よく使って体を支えることができるんですね。
フィッティングの微調整テクニック
ゼロポイントが決まったら、そこから「プラスマイナス2cm」の範囲で微調整を試してみてください。厚底の登山靴を履いている場合はその分を考慮したり、少し前傾姿勢で歩く癖がある方は1〜2cm短くしたほうがしっくりくることもあります。自分の歩行リズムに合った「マイ・ベスト」を見つけるのが、山歩きを楽しくする第一歩ですよ。
登りと下りで変える斜度に応じた調整
トレッキングポールの真価は、状況に合わせて長さを自由に変えられる「動的調整」にあります。
どれだけ高級なポールを持っていても、登山口から山頂、そして下山までずっと同じ長さで通してしまうのは、実はとてももったいないことなんです。地形に合わせて長さを最適化することは、バイオメカニクスの観点からも非常に理にかなっています。
登り坂での「短縮」がもたらすメリット

急な斜面を登る際、平地と同じ長さのままだと、ポールを突く位置が身体よりかなり高い位置になってしまいます。これでは常に「万歳」をしているような状態で腕を動かすことになり、上半身がすぐにバテてしまいます。
登りでは、基準となる長さから「マイナス 5cm程度」短くするのが鉄則です。こうすることで、腕の「引き(プル)」の力を効率よく推進力に変えることができ、足の筋肉にかかる負担を上半身に分散させることができます。
下り坂での「延長」が膝を守る

一方で、下り坂は最も怪我のリスクが高く、膝へのダメージが蓄積する場面です。ここでは基準より「プラス 5cm〜10cm程度」長く設定しましょう。
長いポールを前方の低い位置に先行して突くことで、身体の重心が前に突っ込みすぎるのを防ぎ、ブレーキ(制動)の役割を果たしてくれます。
研究データによれば、適切な長さのポールを使用することで、着地時の衝撃を最大で25%程度軽減できるとも言われています。これは山行後半の膝痛予防に直結する、非常に重要なテクニックです。
トラバース(斜面横断)での裏技
道が斜めになっているトラバース路では、山側のポールを短く、谷側を長くするのが理想ですが、頻繁に長さを変えるのは現実的ではありません。そんな時は、グリップの下にあるスポンジ部分(アンダーグリップ)を握り直すだけで対応しましょう。長さを変える手間を省きつつ、瞬時にバランスを整えることができますよ。

1本で使うT型グリップの適切な長さ
2本一組で使うI型(ストレート)に対し、1本でステッキのように上から体重を預ける「T型グリップ」は、特に低山ハイクや膝のサポートを主目的とする方に根強い人気があります。荷重を垂直方向に支える設計のため、I型とは長さの考え方が根本的に異なります。
T型の基準長さを算出する式は、一般的に「身長 ÷ 2 + 2〜3cm」とされています。この設定にすると、グリップを上から押さえたときに肘が自然に伸び、腰のやや高い位置に手が来るようになります。
この「肘が伸びる」というのがポイントで、筋肉の力だけでなく、骨格でしっかりと体重を支えられるようになるため、足腰への負担軽減効果が非常に高いんです。
T型グリップが向いているシーン
T型は推進力を得るための道具というよりは、「バランス維持と衝撃吸収」に特化したツールです。そのため、それほど斜度がきつくない一般登山道や、荷物が比較的軽い日帰りハイクでの使用に適しています。
また、1本だけで使うため片手が常に空くというメリットもあり、地図を確認したり写真を撮ったりする際にも取り回しが良いのが特徴ですね。
歩行生理学的な視点
1本杖(T型)を使用する場合、基本的には「痛む足や疲れやすい足」とは逆側の手で持ちます。これにより、足とポールで三角形の支持基盤を作り出し、歩行を安定させることができます。ポールの長さを正しく合わせることで、前傾姿勢になりすぎるのを防ぎ、腰へのせん断負荷を抑える効果も期待できるんですよ。
初心者向けモデル推薦:LEKIとブラックダイヤモンド
LEKI(レキ)のトレッキングポールの中で、登山初心者の方が最初に選ぶのに最適なモデルを2つを紹介します。参考にしてください。
LEKIは「エルゴンエア・グリップ」など、人間工学に基づいた疲れにくい設計が特徴です。基準(アルミの耐久性、長さ調整のしやすさ)に合致する、信頼性の高いアルミ製伸縮モデルをピックアップしました。
1. マカルーライト AS(アンチショック)
「迷ったらこれ」と言える、LEKIの超定番オールラウンドモデル
特徴: 衝撃を吸収する「アンチショックシステム(AS)」を搭載しており、下り坂で膝や手首にかかる負担を劇的に軽減してくれます。「下りの膝痛予防」に最も効果的な一本です。
2. レガシーライト AS(アンチショック)
コストパフォーマンスと軽さを両立したエントリーモデル
特徴: 上位モデルの機能を継承しつつ、より手に取りやすい価格帯に抑えられたモデル。こちらもアンチショック機能を備えており、身体への優しさは妥協されていませんね。
どちらのモデルも、「身長 × 0.63」の基準長さに十分対応できる調整幅(約100〜135cm前後)を持っています。
Black Diamond(ブラックダイヤモンド)は、世界で初めて「レバー式ロック(フリックロック)」を開発したブランドで、その固定力の高さと頑丈さから、多くの登山者に愛用されています。
初心者の方が基準(アルミの耐久性、長さ調整の容易さ、コストパフォーマンス)に照らし合わせて選ぶなら、以下の2モデルが非常におすすめです。
1. トレイル (Trail)
「迷ったらこれ」と言える、BDのベストセラー・スタンダードモデル
特徴: 高い耐久性を誇るアルミニウム合金を採用した、最もベーシックな伸縮式ポールです。操作性に優れた「フリックロック2」を搭載しており、手袋をしたままでも瞬時に長さ調整が可能です。
2. トレイルコルク (Trail Cork)
握り心地と快適性をアップグレードした上位モデル
特徴: 基本性能は「トレイル」と同じですが、グリップ部分に「天然コルク」を採用しています。コルクは吸汗性が高く、夏場の長時間歩行でも手が滑りにくく、ベタつきにくいのが特徴です。
選び方のポイント
- 身長や手の大きさが気になる場合: どちらのモデルにも「ウィメンズモデル(女性用)」が展開されています。小柄な方は最小長が短く、グリップが少し細いウィメンズモデルを選ぶと、より操作しやすくなりますよ。
- 長さの目安: どちらも 100cm〜140cm(ウィメンズは100cm〜125cm)と調整幅が広いため、平地での「肘90度」はもちろん、登りの「-5cm」や下りの「+5〜10cm」といった調整も余裕を持って行えます。
ブラックダイヤモンドの象徴である「パチッと止めるレバー操作」は、一度使うと病みつきになる使いやすさですよ。
トレッキングポールの長さの選び方:素材の重要性

長さの基準や調整法がわかったら、次は「どんな製品を選ぶべきか」というステップに進みましょう。
実は、ポールの長さが適切であっても、素材や構造が自分の体力やスタイルに合っていないと、逆に疲れを感じてしまうこともあるんです。ここでは装備選定のプロ視点を交えて詳しく解説します。
折りたたみ式や伸縮式など構造の違い
トレッキングポールの収納・展開システムには、大きく分けて「伸縮式(テレスコーピング)」と「折りたたみ式(Z字型)」の2種類があります。この構造の違いは、そのまま「長さ調整の自由度」に直結します。
伸縮式(3段・2段スライド)の特徴
シャフトをスライドさせて収納するタイプで、調整幅が非常に広いのが特徴です。例えば、90cmから135cmまで無段階で長さを変えられるモデルが多く、急峻な登りから長い下りまで、一つのポールで完璧に対応できます。
構造がシンプルで堅牢なため、故障しにくいのも魅力ですね。ただし、収納時のサイズが60cm前後とやや長くなるため、ザックの外側に括り付けて持ち運ぶのが一般的です。
折りたたみ式(Z字型)の特徴

内部のコードで連結されたシャフトを折りたたむタイプで、収納サイズが35cm〜40cm程度と非常にコンパクトになります。ザックの中にすっぽり収まるため、公共交通機関を利用するハイカーに絶大な人気があります。
最近は「FLZ」と呼ばれる、グリップ下部で15cm〜20cm程度の長さ調整ができるタイプが主流ですが、伸縮式に比べると調整できる範囲が狭いため、購入前に自分の「基準の長さ」が調整範囲の真ん中あたりに来るサイズを慎重に選ぶ必要があります。
| 構造タイプ | 長さ調整の自由度 | 収納性 | おすすめのユーザー |
|---|---|---|---|
| 伸縮式 | ◎ (非常に広い) | △ (やや長い) | 縦走、雪山、初心者 |
| 折りたたみ式 | △ (限定的) | ◎ (コンパクト) | スピードハイク、電車移動派 |
カーボンとアルミの重量や操作感の比較

ポールの素材は、歩行時の「スイングバランス(振りやすさ)」に大きな影響を与えます。同じ長さ設定にしていても、素材が違うだけで疲労の蓄積具合が全く変わってくるから不思議ですよね。
アルミニウム合金(7075等)の安心感
アルミ製の最大のメリットは、その「粘り強さ」です。過度な荷重がかかった際、カーボンはパキッと折れてしまうことがありますが、アルミは曲がることで衝撃を逃がしてくれます。
山中でポールが完全に折れてしまうと歩行困難になるリスクがあるため、初心の方や岩稜帯を歩く方にはアルミが推奨されます。重量は少し重めですが、その分安定感があるとも言えます。
カーボンファイバーの軽快な操作感
一方、カーボンは驚くほど軽量です。ポールを前に振り出す際の「慣性モーメント」が小さいため、腕への負担が最小限に抑えられます。
また、微振動を吸収する性質があるため、硬い地面を突いたときの「ジーン」という衝撃が手首に来にくいのもメリット。長時間歩くロングトレイルや、筋力に自信のない女性・シニア層にはカーボンが強い味方になります。
なお、トレッキングポールの使用による身体への影響については、スポーツ医学的な観点からも研究されており、適切に使用することで下肢の関節への負担を軽減できることが示されています。
(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット『アクティブガイド』などの身体活動に関する知見を参考に、歩行補助具の有効性が広く認められています)。
レディースや小柄な方向けのサイズ選定

意外と盲点なのが、海外ブランドのユニセックスモデルを選んでしまうケースです。
これらは欧米人の体格を基準に設計されているため、最小長が100cmや110cmからというモデルが少なくありません。身長150cm前後のユーザーが「登り坂でポールを短くしたい」と思っても、それ以上縮まなくて困ってしまう…というトラブルをよく耳にします。
小柄な方や女性は、必ず「レディースモデル」や「Sサイズモデル」をチェックしてください。これらは単に色が可愛いだけでなく、以下のような重要な設計上の工夫がなされています。
- 最小長の設定:90cmや95cmといった短い状態から使用できるようになっています。
- グリップの細さ:手の小さな方でもしっかり握り込めるよう、外周が数ミリ細く作られています。
- スイングバランス:全長が短い分、重心位置が調整されており、軽い力で振りやすくなっています。
「ストップマーク」は絶対厳守!
長さを合わせる際、シャフトに書かれた「STOP」や「MAX」のラインを超えて引き出さないように注意してください。ギリギリまで長くして使いたい気持ちはわかりますが、重なり部分が少なくなると接合部の強度が極端に落ち、簡単にポキッと折れてしまいます。自分の身長に対して、最大長に10cm程度の余力があるモデルを選ぶのが、安全管理の基本ですよ。

まとめ:トレッキングポールの長さの選び方
ここまで詳しく解説してきましたが、トレッキングポールの長さの選び方と調整の重要性が伝わりましたでしょうか?最後に、この記事の要点をギュッとまとめます。
理想的な一本を選ぶ・使うための最終チェックリスト
- 静的な選び方:「身長 × 0.63」を目安にし、肘が90度に曲がるモデルを選ぶ。
- 動的な使い方:登りは5cm短く、下りは5cm〜10cm長くして身体の負担を逃がす。
- 素材の選択:安心・耐久性なら「アルミ」、軽さ・振動吸収なら「カーボン」。
- 小柄な方の注意:必ず最小長を確認し、調整幅に余裕のあるレディースモデルを選ぶ。
- メンテナンス:使用後はシャフトを抜いて乾燥させ、ロック機構の「シャフト滑り」を防ぐ。
トレッキングポールは、単に「突いて歩く棒」ではなく、あなたの膝や筋肉を保護し、登山の寿命を延ばしてくれる「能動的なサスペンション」です。自分にぴったりの長さに設定されたポールがあれば、今まで以上に遠くの景色まで足を伸ばせるようになるはずですよ。
なお、各ブランド(シナノ、レキ、ブラックダイヤモンド、モンベルなど)によって、ロック機構の調整方法や耐久性の基準は異なります。正確な操作方法や安全基準については、必ず各メーカーの公式サイトや取扱説明書を確認してくださいね。

最終的には、実際のフィールドで試行錯誤しながら、自分だけの黄金比を見つけていくのが一番の近道です。皆さんの山行が、より安全で快適なものになることを心から願っています!
(参照元:トレッキングポール|国内生産 – シナノ)
(参照元:LEKI | 登山靴のキャラバン公式サイト)
(参照元:ブラックダイヤモンド)


